「ウェラー卿?葉月さんに聞いた方が早くないかな」
「それがそうもいかなくて……」
苦笑する有利の説明が進むにつれて、村田からも笑顔が零れる。
しまいにはクスクスと笑い出す始末だ。
「随分可愛いお願いだね。でも僕は知らないな」
残念、なんて残念がっていないのに漏らす村田に、有利は「じゃあ悪いけど目瞑って」と伝えれば。
村田は笑いながら大人しく目を瞑り、有利と葉月の足音が聞こえなくなるまで開けたりしなかった。
そんな野暮なこと、したくなくなるほど可愛らしい内容だったから。
「よし、この角もあんぜ──」
「おんや、陛下じゃないですか」
「ギェェェー!」
廊下の角を曲がろうとした瞬間、反対側から聞こえた声に、これまた正常ではない驚きの叫び声が響いた。
ロボットのようにガチガチに固まりながら振り向けば、目を真ん丸にして固まるヨザックの姿が。
「ゾモサゴリリュウに遭遇したみたいな反応ですねー」
何とか平常心を保とうとしているのもバレバレなお庭番。
心臓は早鳴りしているに違いない。