※桐皇火神/モブ注意


「なー、あれ、男バレのマネ」

 インターバル3分、メガネの奥の腹黒さは全く隠さない元主将にしごかれた後。練習再開まであと2分。オレの肩の上、唯我独尊我らがエース様が指を指す。タオルを持った手がだらりと下がって離れていった。
 体育館に入ってきた茶けたポニーテール、紺地にピンクのラインのジャージ。ボトルを持ちながら部室へと走っていく女子。うちの委員長だった。

「同じクラス、オレ」

 スポーツドリンクを一気に煽って床に置いて座り込んで、青峰の顔を見る。視線は部室のドアの前。

「胸でかくね」

 いつも通りのくだらないそれ。だけだと思いたい。

「お前そればっかじゃん」

「いや胸でかくね?」

「聞こえてるよ」

 傍にあったボールを拾い上げておもむろにボールをつきだす。視線はもちろんそのままで。オレの視線は青峰の青いバッシュに。

「彼氏いんの」

「知らねえけど」

 床から伝わるボールの振動がどんどん早くなっていく。オレの心臓の音と大体一緒。

「メアド聞いてこいよバ火神」

「自分でいけよアホ峰」

「同じクラスだろ?いってこいって」

 ドリブルが止まって思わず見上げる。片手で放る、ゴールに吸い込まれる。ボールの行方を見届けてから青峰の顔をそっとうかがった。やっぱり視線はそのままで、肩で顔の汗を拭って、口元は、

 少しだけ泣きたくなった。唇を噛んだ。

 ブザー音が体育館に響く。


 青峰がやたらオレの教室に来るようになった。オレの席の前を陣取って、オレと話す風を装って、ひたすら彼女を目で追った。
 机に肘をついて教室の中を見回す青峰の顔は男のそれだった。

「なーあの子さあ」

「おー」

 購買で買ってきたパンを口に詰め込む。余計なことを話しそうな口をせっせと塞ぐ。

「彼氏いんのかなー」

 知らねーよ聞けねーよしつけーよオレに聞くなよ彼氏がいてくれたらどんなにいいかとは口が裂けても言えないので大してうまくもないパンを飲み込んだ。

「聞いてくればいいんじゃねえの」

 青峰と同じように頬杖をついてその彼女を見る。
 誰もやりたがらなかった役職をしょうがないなーなんて笑顔で言いながら引き受けてた子。委員長。最近男子バレー部のマネージャーになった。それだけ。オレの彼女への認識。大して話したこともないクラスメイトのことなんてそんなもんだ。そんなもんだった。青峰が目をつける前までは。
 普通に、いや結構可愛いタイプの子。友達は多い。リーダーっぽい。しっかりしてるように見えて少し抜けてる。勉強は普通よりもできる。オレよりは遥かにできる。それから男には割と好かれる、らしい。女子が言ってた。
 青峰が体育館で彼女を見つけてから、彼女に関する情報がどんどん増えていく。あまり嬉しくない。
 彼女と同じグループの子の一人と目があった。揃って見つめるオレたちに気が付いたらしく周りに知らせ始めた。ああ女子だなって感じの、当たり前だけどオレにはない高い声がいろいろ重なってからこっちを見る目が一気に増えた。
 件の青峰の『お気に入り』の彼女もこちらを向く。少し上がった口角と化粧じゃないんだろうなとオレでもわかるピンクの頬を見ていられなくて視線を落とした。視界の端に入り込んでいる青峰が結構格好良く笑ってひらひらと手を振っているのが見えて、頭がもっと下がった。履き潰した自分の上履きがみえて更に惨めな気持ちになった。床に落ちていた飴の包みを踏む。
 黄色い声が聞こえて、重なる上履きの音が遠ざかる。静かになった教室の中、カーテンだけがばさばさと音を出す。それでも教室にこぼれた低い声は聞き逃さなかった。

「オレあの子好きかも」

オレはお前が好きだよ馬鹿野郎。


→→どうやったらそこにいける?

無自覚→ノンケ→モブ

自覚しちゃったけどね!
普通にその子と付き合う青春青峰(韻は踏んでない)と応援しちゃうしきっかけも作っちゃってはまった火神が見たい
続けたいけどこれ青火になれないよ!!!!

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -