倒れそうな体にムチをうち、ひと気のない通りを歩く。
時折、右足に激痛が走り顔をしかめる

なまえはさっきまで、不良達と喧嘩をしていた。
相手は五人でしかも男だ。
誰から見ても圧倒的に不利な状況だったが、彼女の俊敏な運動神経によって勝つことができた。
だが彼女自身も右足に深い痛手を負ってしまい、自由に歩く事ができない。


『さて…どうしようか』


明かりが灯っている自動販売機の横に、なまえは腰を下ろす。
何か買おうとポケットを探るが、一銭も出ず、ガムや紙くずしかなかった。

『くっそ…なんも買えないじゃん』

なまえは八つ当たりをするように左足で地面を蹴った。乾いた音が周りに響く

夏だというのに、夜風は凍えるほど寒い。
彼女は、寒さで震える体を抑えるためうずくもる。それでも震えは止まらない。
ガチガチと震えていると、頭上に気配を感じた。
慌てて見上げると、男がなまえを見下ろしている。
こんな近くに来るまで気づかなかった自身に絶望しながらも、彼女は男を警戒するように睨みつけた。


『何の用?』


「別に…飲み物買おうとしたら、あんたがいたから見てただけ」


男はたんたんと言う。
見た目は10代そこそこなのに髪の毛は年寄りのように白い。
白髪の男は、なまえの右足や傷だらけの体をちらっと見て話を続ける。


「その怪我、どうしたの?」


『あんたには関係ない』


「ふーん」


『用がないなら、さっさと私の前から消えな』


「言うね、あんた」


『知るか、さっさと離れろ』


なまえは突っぱねるように言い放ったが、男は全然気にしていなかった。
むしろ彼女に興味が湧いたのか、ニヤリと口角をあげなまえを見つめる


「そんな強気なら大丈夫だな」


『何が?』


「ここらへんは、治安が悪くてね。女なんて格好の餌食にされる」


『…』


なまえは男の話を聞き、冷や汗を流した。彼女は喧嘩は強くとも、女であり今は怪我人なのだ。


「少し怖気ついたみたいだな、喧嘩の強いあんたでも」


『私を知ってるの?』


「偶然、あんたが不良どもと喧嘩してるのを見かけたんだよ。男五人に勝つとは、強い女だと思った」


『そう…』


「それであんたに、興味を持ったんだ。名前、教えてくれないか?」


『名前の知らない他人なんかに教える義理はない』


私がそう言うと、男は軽く笑い出す。私はなんだか馬鹿にされた様な気がして不愉快だった


「クククッ…俺はアカギしげるだ、年は19。これで俺の事がわかっただろ」


『なんだソレ…』


「あんたが言い出した事だ、だから俺とあんたは他人じゃない」



『…わかったよ、私はみょうじなまえって名前だ』


なまえは渋々と名前を名乗る。
それにアカギは満足したように笑う


これが二人の出会いとなった














   




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