速まる動機を必死で抑えるため、深く深呼吸する。が、意味はなく余計に頭が冴えてしまって全身が震える
名無しはカルテの整理などのため残業をしていた。仕事も終わり、コーヒーでも飲んでから帰ろうとした時、何か言い争う声が聞こえたのだ。
声で宮田先生と恩田さんだと分かる。
最初はほっといたが、段々騒がしくなり、ある時急に静かになった。
不信に思った名無しは、彼らの所に向かった。
そこで、宮田先生が恩田さんの首を絞め殺した現場を見てしまった。
宮田先生っ!何してるんだ!
彼女は止めに行こうと体を動かそうとするが、ビクともしなかった。
ドアの隙間から見える宮田先生の顔は、殺人鬼とは思えないほど穏やかで口角を上げている。
その時、宮田は彼女の目線に気づき目が合った。
名無しは咄嗟に部屋の中へ入ってしまった。恐怖もあったが、なぜ彼が恩田さんを殺してしまったのかという疑問の方が大きかったからだ。
『宮田先生、なんでこんな事したんですか?』
「・・・なぜ貴方がここにいるんですか?」
『私の質問が先です、答えてください』
名無しは苦渋の表情を浮かべる。
宮田は彼女を見て、俯き小さく溜息を吐いた。
「・・・分からない。」
『わからない?ふざけてるんですか』
「ふざけてませんよ、本当にわからないんです」
嘘だ。
名無しは勘と自身の洞察力で思った。
宮田先生は誰が見ても、冷静で頭も良く、要領もいい。
そんな彼が、人を殺した動機がわからないなんて信じられない。
『・・・恩田さんに何か言われたんですね』
「・・・・」
『双子のお兄さんの事ですか?』
宮田の表情が固まる。
当たったと思った名無しは、宮田に距離を起きながら、慎重に言葉を選びながら尋ねた。
『宮田先生、私はこの村の事情を良く知りません。ですが、医者のあなたが人を・・・しかも自分の恋人を殺めるなんて』
首筋にジワリと汗が滴り落ちるのがわかる。部屋の熱気で体は暑さを訴えるのだが、私の脳内は酷く冷めていた。
続く?