私の両親は、宮田家と神代家とは関わってはいけないとよく話してた。
幼い私は、理由を聞いたんだけど、二人ともただ押し黙るので、子どもながらに聞いてはいけないんだなと思い、それ以上は問いたださなかった。

実際、神代家の淳様は傲慢でいじわるだからあんまり好きじゃない、でも宮田家の司郎くんはいつも無表情で怖いけど、なぜか私には寂しそうに見えて嫌いにはなれなかった。


『重たいなあ・・・』

ある日、私は親のお手伝いで畑まで道具を運んでいた。こういった仕事はお父さんがするはずなんだけど、腰を壊したから、私が引き受けたのだった。

家から畑までの距離は結構遠い、片道一時間以上もかかる。おまけに前日に土砂降りが降っていたので、地面はぬかるんでる。

『き、キツイよお・・・』

私の手が小刻みに震えていた。体力的にも限界なんだと悟る。
頑張ろうと歯を食いしばり、足に力を入れると、石に躓き倒れてしまった。


『いっ・・たぁ・・』


私は倒れた体を立て直そうとすると、右足に激痛が走り情けない声をあげた。
見ると、右足の膝小僧はぱっくりと空いていて、血が溢れているのを感じた。
全身の毛が逆立つのがわかる。頭の中では、ぐるぐると考えはまわってるのに、声は震えて何も言えなかった。


『うっ・・・お母さん・・』


助けを呼ぼうにも、ここの道は一通りが少ない。私は完全にパニックに陥っていた。


「大丈夫ですか?」


頭上から声が聞こえたので見上げると、そこには宮田司郎くんがいた。


「右足、酷い怪我をしてますね。立てますか?」


冷静に質問をする宮田くんに、私はただただ、痛みで涙を流す事しかできなかった。

「その調子ですと歩くのは無理そうですね、医院まで送ります」


そういい彼は、私には背中を乗るように催促する。とても嬉しいけど、私は運ばないといけない道具もあり、どうしたらいいか悩んでしまった。


『あの・・道具、運ばなきゃ』


「道具?」


私は背負っていた道具を指差す。転けたせいでいくつか散らばっていた。


『運ばなきゃ、お母さん待ってる』


そういうと、宮田くんは小さく溜息をはいた。私は軽くショックを受け、俯いてしまう。


「・・・道具、あとで僕が運びます。それより、あなたの怪我が危険です。」


そういい、彼は無理やり私に背中に乗らせた。ズキズキと右足に痛みが走るが、宮田くんが気を使って運んでくれてるため、それ以上の痛みは感じなかった。


『宮田くん、ありがとう』


私はお礼を言った。彼は私の方をチラッとみて、医者の息子ですから、と抑揚のない声でいった。


この後の治療は、消毒が染みたりお風呂が辛かったり色々あったけど、宮田くんの事が知れて良かった気がした。
彼はぶっきらぼうだけど、どこか優しい。今度、お礼に私が育てた果物でもあげようと思い、ベランダにある苺を見つめていた


   




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