友達の続き
『あんた、こうやって何人もの命を奪ってきたの?』
「奪うには奪ったさ!だが、こちらにもリスクをつけたんだし五分五分だろ?」
時計の針が夜中の2時を回る頃、和也はある店の地下室に来ていた。
そこでは、莫大な借金を抱え返済不可能とされた人間が、和也にスカウトされ、【一攫千金負ければ死】のゲームをさせられてた。
結果は言うまでもなく、和也の勝ちであった訳で、床に転がっている男は負け、そのゲームの制裁を受けた後だった。
そこにこっそりつけていた名無しは、その光景を目にしていたのだ
「お前もついてくるなら、言えばよかったのに。コソコソ隠れて見にくるなんざ、趣味ワリーな」
和也は罰が悪そうに言う。
『まあね。』
名無しは続けて話す。
『和也くんはさ、お金と命が一緒の価値だと思うの?』
普段名無しは、和也を呼び捨てで呼んでるが、あえて君付けで呼び挑発した。心なしか、声が震えている
「金は命に変わらないが、命は金で買える。労働しかり臓器しかり」
『・・・』
「お前、今俺が悪い事してるって思ってるだろ?」
和也は尋ねた。
それに答える様に、横に首を振る名無し。
「反対だよはんたい!俺は優しく手を差し伸べたんだよ。ゲームに勝ちゃこいつの借金はなくなるどころか、大金持ちになれたんだ。そんな俺が」
『和也、私は今心の底からあんたを軽蔑するよ。』
名無しは和也の遮る様に言い、睨みつけた
『あんたは命がけじゃないから、そんな馬鹿げた事ができるんだ。和也がそのイカれたゲームに誘った相手は、どいつも借金まみれの人間じゃないか。そんな追い詰められた人に正常な思考ができるわけがない。あんたは確信犯だ。』
吐き捨てる様に名無しは言った。地下室では、密室なので名無しの声が木霊する。
『このままじゃあ、和也、本当に大切なものを失うよ。』
「なんだよ、大切なものって」
『お金だってそうだし、友達や最愛の人とか・・・』
その瞬間、和也は名無しの肩を押し、壁に追いやった。
痛みで顔を歪める名無し、上から冷たく名無しを見つめる和也。
「・・・金なんて下らねぇ。無くなってせいせいする」
『和也、離して』
「お前のいう友達?最愛の人?そんなのおとぎ話だね。少なくとも、俺の世界じゃあり得ねぇよ」
和也は、名無しに肩を抑え付けてる手を強めた
『か、和也、痛い』
「お前もどーせ、俺を裏切るんだろ?」
『はっ!?裏切ら』
「なら証明してみろよ!なんなら、俺と賭けをしようぜ。」
口角をあげ、笑う和也。
名無しの目が、大きく見開かれた。冗談ではないことを悟ったんだろう。
「お前、あの時俺を友達だっていったよな?なら友人のお願い聞いてくれよ」
和也の頬に衝撃が走る。
『和也、あんた本当に救いようのない奴だ』
ポロポロと大粒の涙を流す名無し。
和也は殴られた頬を摩りながら、名無しと目を合わせる。
『さようなら』
名無しは、和也の手を振り払い地下室を出て行った。バタンと閉まる扉。
和也は、行き場のない怒りをぶつける様に壁を殴った。
力を込めて殴ったので、壁に小さな穴が空いたが反対に和也の拳も傷つけてしまった。
心配した黒服が駆け寄るが、静止させる和也
「こいつを早く運べ」
「でも坊ちゃん、血が・・」
「いいから、早く!」
和也に怒鳴られた黒服達は、せこせこと男の死体を運ぶ。
その間、ずっと和也は下をぼんやりと見つめていた。
「なら、俺はどーすりゃ良かったんだよ・・・」
小さくため息をはいた和也。心には喪失感を抱えながら