張り詰めた空気の中、名無しはチラッと時計を盗み見た。
七時頃を過ぎており、そろそろ夕食の準備をしなければと焦るが、アカギの醸し出す雰囲気によって、名無しは動けない。

「名無し、今日どこ行ってたの?」

アカギは長い沈黙を破り、名無しに尋ねる。

『普通に…仕事に行ってました』

首筋から汗が滴り落ちる。
窓から入ってくる夏の夜風は涼しいのに、私には、アカギさんの冷たい怒りを具現してるようで不愉快だった。

「あんたが男と喫茶店に居たのを見たんだけど?」

『えっ…』

私は彼が言った事を聞いて、軽く目を見開いた。
確かに仕事帰りに、男の人と喫茶店に行ったが、やましい心があった訳じゃない。
男の人とは地元の同級生で、彼にアカギさんの事で相談していたのだ。
それは口が裂けても、アカギさんには言えない。

黙ってる名無しを見た、アカギは小さくため息を吐いた。

「俺に黙って浮気とは、いい度胸してるね名無し」

『違います、浮気じゃありません』

「じゃあ何?」

『地元の同級生で、久しぶりに会ったので話をしただけです』

「へぇ…その割にはやけに親密そうだったけど」

『それは…』

「何話してたの?」

アカギは名無しに近づく。
彼女は恐くなり後ろに寄るが、手に壁がつき必然的に壁とアカギに挟まれてしまった。

『言えません』

「なんで?」

身長の高いアカギは、彼女を見下ろす
名無しはたまらなく怖かったが、意を決して言い放った。

『アカギさんだって、私に一つや二つ隠し事はあるでしょう!』


「…」


黙るアカギから逃れようと、押し出した瞬間、名無しは床に押し倒された。
アカギは素早く彼女の両手を片手で拘束し、もう一方の手で名無しの顎をつかむ。
彼の瞳は鋭く光り、彼女は身震いをした

「俺なりに大切にしようと思ったけど、もうその必要はないみたいだな」


『アカギさん、離して』


「これからは俺の好きにさせてもらう」


アカギは掴んでた手を離して、名無しの服をめくった。
彼女のお腹を上下に撫でるように触る


『ぁ、アカギさん…』


小刻みに震える名無しは、アカギを酷く興奮させた。
無理矢理襲う事に背徳感があっても、それ以上の欲情がアカギの心の中に溢れていた。


「無理矢理されるってどんな気分?」


『い…やだっ…』


「嫌がってるにしては、随分と良さげじゃない」


アカギはブラを外そうと、背中に手を忍ばせると同時に名無しを見た
彼女を見ると目には涙を浮かべながら吹き出しそうなっている。



「なんで笑いそうになってんの?」


『あははっ…好きな人にされて嫌なはずないじゃないですか』


「…」


『実は、同級生にアカギさんの事を相談してたんです』


私はアカギさんの頭に手をまわし、抱きしめた。暖かい吐息がかかってくすぐったいけど、どこか気持ちいい。


『言ったらカッコ悪いと思って、言い出せなかったんですよ。』


「なんで、そんな事したの?」


アカギさんは、私の目を見て尋ねる。
あまり表情をださない彼だが、この時は酷く困惑してるようだった。


『ただ、私はアカギさんに喜んで欲しくて』


私は黙ってるアカギさんに構わず話し続ける


『同級生とはやましい事なんて全然ないです、だって私アカギさんの事大好きだから』


名無しはそういうと、照れ隠しでアカギを強く抱きしめた。
アカギもそれに乗るように、名無しの背中に手をまわし抱きしめる。

「名無し、ごめん」


『いいんです、黙ってた私も悪いから』


二人は目が合うと、キスをした。
アカギはさっきまでとは違う、相手を気遣うように



涼しい夜風が風鈴を鳴らし、外では花火が打ち上げられていて夏の風情があるが、二人は見向きもしなかった。


   




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