BLCP
.あと1センチ、触れられない手を
互いの家を行き来する仲でも、何故伝わらない?ヒントは出しているのにどうして気づかない?
どうか分かってほしい。
膝を抱えて買ったばかりのジーンズを涙で湿らせてそして濡れた場所にあ、いい色だなあなんて思っちゃって。あいつに、木吉に理解してほしくて隠しに隠した言葉を吐いた。でもそいつはその言葉を放っておけばいいものの、しっかりキャッチしてまじまじとみて理解しないまま終わる。言葉のキャッチボール?そんなの嘘っぱちだ。あいつに会話を投げかけても一向に帰ってこない。
だんまり。
余りにも静かすぎて、木吉。言っても返事はない。またかと決まって、いつだって言うはめになる。
「お前の心はどこにある?」
ソファーにだらりと寝そべっていた木吉は、軽い口調でそう言葉を放った。いつも居る自宅なのに、こんなに居心地が悪いとは感じたことがなかった。感情が思うのではなく、本能がそう脳に知らせる。
「さあね」
ふわふわした会話。内容が薄すぎて無くなりそうなくらいに軽くて、なによりも重い「なにか」が隠れている。
「幸せ?」
今度は俺が聞いた。どうなんだろうか、泣いてる俺にも(もう落ち着いたけど、また泣いてしまいそう)言葉をくれよ。
「どうだろうなー」
せっかく晒けだした言葉を、まじまじと見ずに飲み込んだ木吉。悪意の無い目でじゃあまたな、手を振って遠退いていく木吉を引きとめることすら出来なくて、伸ばした手があいつに届かないことを恨んだ。
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