BLCP
私を置いていかないで

 


「永吉ったら、また牛丼ばっかり食べて……。
スポーツマンなんだから食事くらいちゃんとなさいな」



いつもいってるのに、永吉は耳を貸さない。



そんなことだから後輩に『牛丼先輩』だなんて呼ばれちゃうのよ。














──────────


……あら? ここは何処かしら…?



前に居るのは……永吉?



こんなところで何してんのよアンタ。



ちょっと待ちなさい。



あっ! こら永吉待ちなさいってば!!



………ぁぁ、行っちゃったわ。



全く…私を置いてくなんて酷いじゃない!



……そういえば…出口は何処かしら…?



………。



…………征ちゃん? 小太郎…?



みんな何処なの…?



ッ、ねぇ! 誰か返事をしてよっ!!



ねぇったらっ!!










………ち、……ぃ…ち…。



何処に居るのよ、永吉。



私を置いてくなんて……置いてく、なんて…。





『玲央』





、ッ!!



永吉……永吉なの…!?



アナタは一体何処に居るのよ…!





『おーい、玲央ー?』





…まさか、私の声が届いてないの…?



ねぇ、永吉。私はここよっ! ここに居るわっ!!



待って! 行かないでっ!!



私の手を……離さないで……っ!














──────────




「おっ、どうした玲央」
「……ぇ…?」
「寝てたと思ったら急に手ェ伸ばしてきただろ」
「あら…私、寝てたの…?」
「おう。オレが部室に来たときにはぐっすりとな」
「……そう、ごめんなさいね」
「んなことより、どうかしたのか?」
「なに、が…?」
「魘されてたからよ。嫌な夢でもみたのか?」

………嫌な夢。

「…そうね、とってもヤな夢だったわ」

征ちゃんに、小太郎に置いていかれる嫌な夢。

けど、何より嫌だったのは、

「アナタにね、置き去りにされる夢をみたのよ」

…なぁに? キョトンとした顔しちゃって。

「玲央ってたまに馬鹿だよなぁ」
「な…っ! 何ですってこの筋肉馬鹿!!」
「おう、サンキュな!」
「だから褒めてないわよっ!!」

もうっ、こっちは真剣だったのに馬鹿馬鹿しくなってきたわ。

「玲央」

永吉が腕を広げて私に言った。

「来いよ」

……はぃ…?

「ああもうめんどくせぇな」
「ッ、きゃっΣ」

突然私の手を引いて腕の中へ。

「ぇ…永吉っ!?」

加減を知らないこの筋肉馬鹿は、気にせず私を抱き締める。





「誰がお前を置いてくかよ。
それじゃ、何のために一緒に洛山(ココ)に来たのか解んねぇだろ?」





そしてそのまま言うもんだから、涙腺が緩むのを抑えきれなかった。


「……ッ、…ばか…っ」


痛いくらいに抱き締め続ける永吉。


だけど、伝わる体温が愛おしい。




ああ…私って幸せね。













「そうだよ、玲央。
僕らも君を置き去りになんかしない」
「いつでも一緒だよー、レオ姉!!」


何処から聞いてたのか、征ちゃんと小太郎がそう言いながら入ってきた。


「征ちゃんっ! 小太郎っ!」


私は永吉から離れて二人に抱き着く。


「大好きよ、二人ともっ♪」
「僕も好きだよ、玲央」
「オレもー!」


二人が受け入れてくれる。


それが嬉しい。


だから今度は私が永吉に抱き着いて言うの。




「永吉も、大好きよっ♪」













やっぱり私、すっごく幸せ者だわ…!






【───私を、置いて……】




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