BLCP
笑ってくれればそれでいい
「なー、リコー」
「何よ鉄平、ダラけちゃって」
「日向をオレに惚れさせるにはどうしたらいいと思うかー?」
「……やっぱり…そうだったのね」
「おー、気付いてたかリコ」
「そりゃあそこまであからさまにされて気付かないなんて、日向君くらいよ」
「鈍いもんなぁ。ま、そーいうとこも好きだけどさ」
ああ、好きだ。
そんなとこも、何もかも。
「とりあえず、これ以上ウザがられないようにしてみたらいいんじゃない?」
「…そうか! もっとアピールしてみればいいんだな!」
「……はぁ…」
「どうしたんだ、溜め息なんかついて」
「………別に。…あ、日向君」
「あ、日向!」
「よぉお前ら早ェな」
日向が教室に入ってきた。
「日向君こそ、今日は早いわね珍しく」
「あー…何か目ェ覚めちまったんだよ」
「…何かあったの?」
「…いや、別に…。ただ最近あんま寝れねぇんだ」
「悩み事? 私で良ければ相談聞くけど…」
「………」
「ん? どーした日向」
黙ったかと思うと、日向がオレをジッと見た。
心なしか浮き立つと、日向が言った。
「何ニヤニヤしてんだよダァホ」
「ぇ? オレニヤニヤなんかしてたか?」
「してるよ! 現在進行形でな!!」
おっかしいなー。
別に笑ってるつもりはないんだけどなぁ。
でも、怒ってる日向も可愛い。
「……お前らさ、」
ふと、オレとリコをみて日向が言った。
「…、付き合ってんのか…?」
「「…………………はぃ!?」」
オレとリコが付き合ってる…?
そ…、
「…そうだったのか…!?」
「違うでしょ馬鹿!!」
「だよなぁ! 驚いたぁ」
「………アンタってホント…」
「……違う、のか…?」
「違うっ!!」
不安げにオレたちを見つめる日向に、思わず声を荒あげる。
「………」
「違うわよ、日向君」
「…なんだ、そうなのか」
未だに疑う眼差しを向けた日向は、リコが言ったところで納得した。
「…何よ、日向君。もし私たちが本当に付き合ってたら不都合でもあったの?」
「へ?」
「だって今、否定したら安心してたじゃない」
「いや…何つーかさ……その為にお前らが早く来てるんだったら、オレ邪魔かなーって…」
「邪魔? オレは日向が来てくれて嬉しいぞ?」
「ッ、…馬鹿かよお前…」
「?」
「ホントに嬉しそうに言うなよな」
「? 嬉しいのに嬉しくしちゃダメなのか?」
「〜〜〜ッ、だからぁ!!」
日向の言ってることの意味か解らない。
いや、冗談とかじゃなくて。
「……はぁーっ」
そんなやり取りを繰り返していると、リコが深い溜め息をついた。
「…んだよ」
「私より日向君の方が余程恋人に見えるわよ」
「ハァ!?」
「ホントかっ!? リコ!」
「何喜んでんだよダァホッ!!」
「日向は嬉しくないのか?」
「そんな要素が何処にある!?」
「なんかいつも一緒に居る相棒みたいでいいなって♪」
「いや、いつも一緒に居るのはお前より伊月の方じゃね?」
「…お前は伊月と恋人になりたいのか?」
「待て待て待て待てちょっと待て。誰が恋人の話をしてたよ?」
「違うのか?」
「当たり前だろダァホ!!」
「よかったぁ」
「話が進まねぇ!!」
そんなやり取りを繰り返す二人。
そして日向がつっこむのも億劫になってきた頃、木吉が思い出したように言った。
「あ、そうだ日向」
「何だよ」
「これいるか?」
そう言って取り出したのは、何やら重厚な箱。
疑問符を浮かべながらも、そっと蓋を開くと、
「…ぉお…!!」
そこには立派な城の模型が。
「これは箕輪城じゃねぇか! しかも塗装も何もかもが完璧…!
……木吉、どうしたんだよこれ」
「親戚の叔父さんに日向のこと話したらくれたんだ。
お前に貰ってほしいんだって」
「さんきゅ、な」
そして嬉しそうに顔を綻ばせる。
まるで花のように、可憐で、優美で。
だからオレは、お前を手に入れたいんだ───。
「木吉も。ありがとな」
ッ、!
ああ……やっぱり違うな。
日向が好きなのは已然少しも変わらない。
けど、そうじゃない。
日向がオレの傍で笑ってくれるだけで、
ただそれだけで、
オレは幸せなんだなぁ。
「やっぱりただのバカップルよ、アンタたち」
───笑ってくれれば、それで…
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