実渕玲央
無意識なその行為
休憩に入ろう。主将である赤司君がそう一言言えばぞろぞろと休憩を始める面々。その滴る大量の汗が練習のハードさを物語っている。流石、うちの主将は容赦がない。
「名前ちゃん、タオル取ってくれる?」
「あ、はい!」
同じくして休憩に入った玲央先輩に呼ばれ、タオルとドリンクを片手に玲央先輩のもとへ行けば尋常じゃない汗をかき、Tシャツの衿元をパタパタとしている玲央先輩がそこにいた。色気が凄まじいです。
チラチラと覗く鎖骨に思わず目を逸らしながら、おずおずとタオルを手渡す。
「ありがとうね」
ぽふっという擬音が付きそうな勢いでタオルに顔を埋める玲央先輩。「あら、いい香り。洗剤変えたの?」流石です。
「いいわね、この香り」
「本当ですか?よかったです」
「さっすが名前ちゃんね!」
そう言って私の頭にぽふぽふと手を乗せる。玲央先輩は人の頭を撫でるのが好きなのか、よく私の頭を撫でる。更に髪の毛に触るのも好きらしい。最初の頃は動揺していたのが、今では慣れた。寧ろ私も、玲央先輩に撫でられるのは好き。何故か安心する。
「玲央先輩って、頭撫でるの好きですよね」
「え?そうかしら…」
指先を顎元に寄せ、ふむ、と考える様な様子を見せる玲央先輩。意図的なものではなかったらしい。無意識な癖、というものなのか。私も緊張したり恥ずかしかったりすると服の裾を掴む癖がある、と赤司君に言われたことがあるが自分ではよくわからない。多分、玲央先輩のそれも私と同じ様なもの何だろう。そう思っていたのだけど。
「そうねー…名前ちゃんだからかしらね」
「へ?」
閃いたとばかりにそう言うが、私の頭の中はハテナでいっぱいだ。よくわからない、とばかりに首を傾げれば、ふふっと色気たっぷりに微笑みながら私の髪に指先を絡め、毛先を弄ぶ。
「相変わらず鈍いわねー、そんなところも好きだけど!」
「? 私も好きですよ、玲央先輩のこと」
そうじゃなくて、とあからさまにガクッと肩を落とす玲央先輩。それもつかの間、次の瞬間には「やっぱり長期戦でいくしかないわね」とよくわからないことをぶつぶつと呟く。
「………、」
ふと、先程まで玲央先輩が触れていた髪に触ってみる。玲央先輩が私の髪に触れた時、凄く心臓がドキドキした。
よくわからないけど、後で赤司君に聞いてみよう。そう自己完結させ使い終わったタオルの回収を始めるのだった。
楽しく書かせていただきました。
玲央ネェ最高です!
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