ラテン語お題B
2011/06/17 00:27


9.Qui dormit, non peccat.(メフィ藤/地獄編)


「お前さあ、こっちに来るなら手土産のひとつやふたつ持って来いよ」
おでんとか、煙草とか。羽毛の柔らかい布団が懐かしい、と、藤本は寂れた地面に荒布一枚を敷いただけの寝床で居心地悪そうに身を捩り、恨みまがしい目でしれっと隣りに滑り込んだメフィストを睨む。睨まれたメフィストは纏わりつく魍魎を手で潰しながら、あなたって人は、と口角を引きつらせる。
「藤本、そう簡単に言いますけど私は一応虚無界を捨てて出てきた身なので正直こうやって帰るだけでも結構なリスクを負ってるんですよ、わかってます?」
「布団の上じゃねえとヤらせねえ」
「わかりました最高級羽毛布団でいいですよね」


(眠っていれば罪を犯さないですむよ。)


10.Dona nobis pacem.(燐勝/未来)


そう見慣ぬもので無くなったとは言え、燐が纏う青い焔は勝呂の身体を反射的に強張らせる。はじめこそ傷ついたり悲しんだりどうしようもなく落ち込んだりしたのだが、五年も経てば燐も慣れたもので、苦笑こそ零れるものの気にしてねえよと大人ぶった笑みを浮かべ、自然な動きで勝呂から距離を取ることができるようになっていた。本当に、燐は気にしていない。なぜなら、次の瞬間には、勝呂が離れていく身体を引き留めようと手を伸ばすことを知っているし、なにより。そのあと、申し訳なさそうに自分を抱きしめる両腕の力強さが、燐は好きだったのだ。


(彼に、わたしに、あのひとに、平和を。)


11.Semper idem.(親世代/過去)


いつものらりくらりと行方を晦ます達磨が珍しく一日中京都出張所に滞在していると聞いて、蟒は休日だというのに対して期日の迫らない書類を仕上げると足早に出張所の門を潜る。どないしはったんですかと不思議そうに首を傾げる部下を適当に誤魔化しながら達磨の姿を探す。そして。
「あの、達磨さま?」
休憩室に、彼の人はいた。しかも、
「……なにしとんですか」
「八百造が寝れん寝れんゆうから、久しぶりに膝枕しとんねん」
笑顔を向ける達磨の膝の上には、苦虫を噛んだように顔を顰めた八百造が、それでも大人しく頭を乗せていて。蟒は開きっぱなしの扉を静かに占めると「実は私も最近よう寝れんので」と達磨の隣に腰を下ろす。


(いつだって、おんなじ。)



prev | next


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -