文章修行家さんに40の短文描写お題B
2011/05/31 00:15



21.神秘(燐と勝呂) 81文字

恐る恐る、それでもゆっくりと、確実に、燐の周囲に淡く燈る青い焔に向かって、勝呂は手を伸ばす。近づく指先を、恐怖を浮かべた目で見つめる燐に気づき、勝呂は吹っ切れた様に彼を抱きしめる。


22.噂(親世代) 79文字

八百造は空の郵便受けを見て、これ見よがしに暗い息を吐く達磨に苦笑を零す。彼は達磨の息子で、自分の息子がそばにいるのだ。万が一も、あるはずがないのに。


23.彼と彼女(志摩兄弟と蝮と/昔) 90文字

大きい声は出さないようにと重々釘を刺していたのだが、それに対し金造が大きく返事を返したので、柔造はこんアホが!とこれまた大声で怒鳴る。そんな二人に呆れた蝮は、未来の主を腕に抱いてその場を去った。


24.悲しみ(志摩と勝呂/幼少) 84文字

そういえば、勝呂は同年代で一番力が強かった。志摩の細い背中に回された腕は何の遠慮もなく肺を締め付けており、苦しい。だけども、その小さな嗚咽がやむまで、志摩は黙ったまま、ただただ耐えた。


25.生(メフィストと藤本) 84文字

瓦礫の中、満身創痍の藤本は動きの悪い右腕で周囲を探る。しばらくして煙草を見つけると、それを口に銜えた。そんな藤本に、メフィストはさりげなく火を差し出す。そして「おかえりなさい」と告げた。


26.死(志摩) 80文字

感覚さえ危うい手が血まみれの錫杖を離さないのは祓魔師の使命感からではない、自身が生きるためだ。志摩は絶望の中でも決して膝を折らない。必ず戻れと、他でもない勝呂が望んでいる。


27.芝居(メフィストと藤本) 76文字

どこまでが本音だと問われ、メフィストは笑う。「全部ですよ」そう言えばあからさまに胡散臭そうな視線が返って来たが、悪魔は対して気にもせず、飲みかけのカップに口をつける。


28.体(奥村兄弟/昔) 76文字

悲しいまでに横ばいの線グラフを、憎しみさえ込めるように睨んでいる兄に対し、今も順調に右肩上がりな記録表を後ろ手に隠した弟は、話題を逸らそうと必死に言葉を探す。


29.感謝(京都組/昔) 81文字

八百造の怒声を聞き流しながら拝借したきゅうりを持って川まで走る。痛みさえ感じる冷たさを我慢して綺麗に洗うと、三人はぱちんと音を立てながら小さな手を合わせる。
「いただきます!」


30.イベント(親世代/昔) 82文字

部屋をぐるぐると歩き回る八百造の姿に、「お前が緊張してもしょうがないやろうが」と蟒は声をかける。産むのは奥方なんやぞ。念を押す蟒に、そうやなかったらここに居らんわ、と八百造は叫ぶ。




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