文章修行家さんに40の短文描写お題A
2011/05/29 23:52

11.本(志摩と勝呂) 79文字

勝呂の片方の眉が密かに吊り上げられたのを見て、志摩は慌てて適当に開いていたページに視線を戻す。
「お前、それ逆さまやぞ」
「えっ」
今まで何しとったんやと聞かれ、志摩は口ごもる。


12.夢(奥村兄) 89文字

弾かれたように起きる。辺りを見渡し、見知った部屋であることに安堵するも、喉からこみ上げる嗚咽はどうしようもできず、薄っぺらな布団でどうにか押し殺した。あれは、夢だ。
(ただ、一月前は現実だった)


13.女と女(親世代/昔) 84文字

虎子は直立不動で固まる八百造ににっこりと笑いかけると、その手を掴み大きくなった自身の腹部に押し付ける。あからさまに慌て、手を外そうと躍起になる姿に虎子はふと既視感を覚える。


14.手紙(悪魔兄弟と藤本) 76文字

兄にしては珍しく真面目な顔をして読み物をしていると思えば、手紙だった。覗き込もうとして、やんわりと拒否される。
「やましいものですか」
兄は笑う。消印は一月前。差出人は、死人。


15.信仰(志摩と子猫丸) 90文字

生ぬるい子猫丸の視線に居た堪れなくなって、志摩は手に持っていたデート特集と大々的に書かれた雑誌を無意識に丸める。それ俺のなんだけど!と青ざめる同級生の悲鳴は、志摩の重苦しいため息に消された。


16.遊び(燐と勝呂) 85文字

反射的に、目の前で左右に揺れる尻尾を掴んでしまった。瞬間燐がぎゃあと叫んだので手はすぐに放したものの、余程触れられたくないのか燐の怒りは収まらない。
「こうなったらお前も掴ませろ!」
「何を?!」


17.初体験(メフィ藤) 88文字

赤面のひとつでもしてくれれば可愛いのに、とメフィストが唇を尖らせたので、それを藤本は気持ち悪いと一蹴する。
「三十路を超えた男に何を求めてんだよ」
「男はロマンを追い求めるものなんです」


18.仕事(親世代/昔) 83文字

達磨は立ち尽くす。足元に絡まるのは門徒と悪魔の血で、脳を揺らすのは彼らの怨念と、狂おしいまでの未来への渇望だった。不安げな八百造に取り繕う気力もない。すぐそばに転がる幻影は、彼の者だった。


19.化粧(勝呂夫妻) 88文字

すぐ支度を、と鏡台の引き出しをあっちこっちと開く妻に、夫は首を傾げる。
「そないせんでもええやんか」
途端に突き刺さる妻の険しい視線に夫はたじろぐ。
「いや、お前はそんなんせんでも十分に綺麗やないか」


20.怒り(京都組) 90文字

関係なくとも聞いている方が恐縮してしまうような怒声を、にこにこと笑顔で応じる志摩は、子猫丸の目から見ても楽しそうなのだから、当然勝呂の説教は終わらない。
「志摩さんも大概変態さんやなあ」
「子猫さん?!」




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