メモログ 親世代A
2011/11/02 00:34
八百達の昔話。
ぶわあ、と、今にもこぼれ落ちそうな涙を必死に目蓋に留め、上目遣いにこちらを見やる達磨に、八百造はぎょっと身を仰け反らせる。不味い。これは不味い。色々と、本当に不味い。達磨が瞬きをする度に、大きな目に薄い膜をはった涙がはらはらと流れてしまいそうで、八百造は胸の鈍い痛みを誤魔化そうと、ぎゅうと拳を強く握る。流されたらあかんしっかりせんと、と気を引き締める反面、もうええやないかこのまま受け入れてしまえ、なんて諦めが胸中を支配する。元々、八百造にとって強く出れぬ相手なのだ。座主だとか僧正だとか、血統云々を全て取っ払ったとしても、八百造は達磨に敵わない。いや、もとより敵う気もないのだが。「八百造」嗚咽混じりで名を呼ばれ、今度こそ、誤魔化せないほどに身体が震えた。
「八百造、八百造は――――――――俺と勉強、どっちが大切なん」
「そんなん、もちろん達磨さまに決まってるやないですか!」
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