メモログ 藤本@
2011/10/02 23:23


メフィストと藤本とクロの昔話。


「へえ、それが」
じろじろ値踏みするような視線が嫌だったのか、それとも悪魔的な何かを感じたのか、気持ち良さそうに藤本の膝の上でごろごろ転がっていたクロは、メフィストと目が合うと一瞬びくりと大きく体を震わせ、逃げるように素早く藤本の後ろに隠れる。クロ?と戸惑う藤本に向かってみゃあみゃあなにやら言っているが、あいにく藤本にクロの言葉はわからない。服の袖を噛まれ、この場から立ち去ろうと必死な姿になんとなく目の前の悪魔がろくでもないことをしたんだろうなあ、と想像はつくが。ふいに、メフィストの唇が音を紡ぐことなく何かを囁く。なにを、と藤本が問いただそうとした瞬間、背中に隠れていたはずのクロが藤本の前に飛び出るとメフィストを睨み付け牙を鳴らす。その様子に、おや、どうやら嫌われてしまったようですねえとメフィストは白々しく首を傾げながら笑った。


メフィスト「藤本の膝枕は私の特権なんですよこの泥棒猫!」
クロ「にゃー!!!」
藤本「え、なにこれ」





メフィストと若藤本。まるで悪魔だと他でもない生粋の悪魔が言うのだからきっとそうなんだろうと藤本は血溜まりの中心で思う。少なくとも天使ではないし人間というにはほんの少しばかり逸脱してしまったという自覚はある。だからと言って悪魔と揶揄されるのは如何せん一応は聖職者である立場からすれば直ちに否定すべきだろうけれど残念ながら否定しようにも否定する言葉が浮かばないなんて本当にどうしようもない。メフィストはかつかつとお気に入りの傘で地面を叩く。規則的なそれを聞き流しながら、俺が悪魔なら、と藤本は赤く染まった視界で世界を見る。
「お前は人間だよメフィスト」

心配なんて、悪魔がするもんじゃない。



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