ごく自然なこと

「おれや海賊は海に惚れてる。だからおれはバギーに惚れたんだろうな。」

唐突にかけられた言葉にバギーは小首をかしげる。船長室に入って早々、何を言い出すのか理解できなかった。対するシャンクスはしみじみと頷いていた。

「…何でだよ。」

クツクツと小さく笑いながらシャンクスはバギーの頬に触れる。そのまま触れた頬と反対側に顔を埋めた。

「汗くさい身体。」
「うっせえ、離れろ。」

押し退けようとバギーが肩に手をかけると、離れないようにするりとシャンクスの手が背中に回された。

「潮の香りに、海色の髪。バギーは海だな。」
「いつの間にそんなハデにキザな野郎になったんだ?」

軽く身体を離して眼を合わせる。シャンクスは柔らかく微笑みかけた。

「バギーがそうさせるのかもな。」
「おれのせいかよ。」
「そうだな、バギーは罪作りだ。」

再びバギーに身体を預ける。自然と密着し合う形になったが、意外にもバギーもそれに答えた。お互いの体温が感じられ、触れ合う場所がじんわりと熱を帯びる。

「…お前も海だろ。」
「?」

褪せてはいるものの、輝きは衰えない髪を眩しそうにみつめる。

「夕暮れ時の…真っ赤な海…。」
「ははっ!なんだ、やっぱバギーもおれに惚れてるか!」
「うっせ!只の例えだよ!言いたいコトすんだなら帰りやがれ!」

吐かれた言葉に更に笑いを深める。帰れと怒鳴るバギーの腕は、いつの間にかシャンクスの背を掴んでいて。

「言ってることと行動がちぐはぐだぞ?」
「ふっ…雰囲気だよ!雰囲気!!!!おれは空気が読める男だから…」
「いや、構わねえよ。可愛いおれのバギー自らだからな。」

顔を真っ赤にしながらブツブツと呟いた後、バギーはそのままシャンクスを抱き締めた。にこやかに笑い、シャンクスも回した腕に更に強く力をこめる。

「…もう一生しねえからな。」
「じゃあ一生分抱きしめてくれよ。」
「ハデに死ね!」

そう言ってシャンクスに触れるだけのキスをする。それを嬉しそうに受け取って、朱に染まるバギーに深く深くキスをした。




2009/11/30追記
2010/01/07追記




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