シャンバギで10のお題。 こちらからお借りしました。 短めで甘〜暗まで。 01.立ち入り禁止 「なあ、バギー。入れてくれよ。」 「もう少しだっつってんだろ。」 そのもう少しを聞き入れて一時間は経っている。いつもはバギーに甘いシャンクスも、これには少々苛立ちを感じていた。 「いいぞ。」 やっと許しを得て部屋に入れば、きっちりと施されたメイクにシャンクスは苦笑した。 「バギーはそんなんなくても可愛いぜ?」 「うっせぇ!」 02道しるべ 海ではもちろんのこと標識などなく、地図を持ってさえ辿りつけない場合がある。それなのに毎度、毎度やって来るシャンクスに内心驚きを隠せなかった。なんで分かったなんて聞くのは、今さら野暮なことである。何故ならシャンクスは決まって同じ答えを吐くのだから。 「おれの愛の力に決まってんだろ。」 そんな歯の浮くような台詞を聞けば美味かった飯も、一気に不味くなるだろう? 03触れたら、火傷? シャンクスの思いつきでチェスをすることになった。これでもおれは上手い方だと思ってるのだが… 「チェック・メイト…だな?」 わざわざ同意を求めるのも腹立たしい。どういう訳かシャンクスには全く歯が立たない。おれは奥歯を噛み締めた。 「そう怒んなって、人には得意不得意があってだな…」 「別におれは不得意じゃねぇ!もう一回だ!」 肩を軽くすくませて再開するが、シャンクスの口の端に浮かぶ笑みに、早々チェス板をひっくり返した。 04悲痛な独り言 後ろに気配を感じ振り向けば、案の定赤い髪をしたその男。 「あれ?バレちまったか。」 バギーは頭が痛くなる思いだった。なんでこいつは普通に出てこないのか。最近じゃ悪寒を感じれば大半シャンクスが近くにいる。五感がシャンクスの為だけに働いている気がして嫌だった。 「立ち話も何だからデートでもしようぜ?」 ついでのように口にはするが、彼の目的は最初からそれなのだ。 「…一回沈めてやろうか…ハデ馬鹿め…」 「なんか言ったかバギー。」 「何にもねぇよ!ホラ、さっさと行くぞ。」 シャンクスには照れ隠しなのはバレバレなのだが、それでも満足気に笑って手を引いた。 05全力疾走 あ、バギーだ!まだ気づいてねえな。よし、ちょっくらつけてやれ。 …また派手な服とか派手な宝石とかに眼なんか光らせて。ちったあその視線をおれにも向けてくれればいいのに。ガラス張りのショーウィンドウをずっと見てる…。何見てんだ? 鏡みたいに、反射してて…。…何だおれか!そんなに見つめてくれるなんて。そのままおれはバギーまっしぐら。 06渡さない バギーが笑顔で話していた。それもオレ以外のやつと、オレにも滅多に見せないような笑顔で。 「なあ何であんな奴らの隣でヘラヘラ笑ってたんだよ。」 「うるせぇ、おれの勝手だろうがよ。」 「答えになってない。」 ぐっと腕を押さえる手に力を入れた。バギーは恨めしそうにおれレを見ている。そう、おれだけがバギーの視界に存在してるんだ。 「なあ何でだよ、バギー。」 更に力を込める。ギリリとバギーの腕が軋んで、痛みに顔を歪ませた。 「いきなりなんだ、おれはお前の何でもねぇだろ?」 その言葉に脳のどこかがプチリと切れて、バギーの喉元に噛みついた。紅く血が滲み、ゆっくりと首筋を伝う。 「コレでバギーはおれのだろう?」 首筋に、所有の証。驚いた表情のバギーを余所に、おれは口を塞ぐようにキスをした。 07酒宴と酒乱 脱獄して船では飲めや食えやのどんちゃん騒ぎ。その一角でバギーはグイグイとビンごと酒を煽っていた。 「…ぷはっ…不味いが悪くねえな。」 久方ぶりの酒はすぐに身体に回って、脳を麻痺させた。 (今頃アイツは何をしてるんだ…?) 思考の端に赤髪の男が見え隠れした。その姿は変わらぬ満天の笑顔で己が名前を呼ぶ。 「…あんのハデ馬鹿やろ…う。」 ぷつりと意識は途切れ、一言だけをその場に置いてけぼりにしてバギーは眠りについた。 08キス落下地点 丸くて赤い鼻はおれにとっては忌々しい存在で、鏡を見る度に眉間の皺を作らせる元凶だ。それなのにアイツはこの鼻を見る度に可愛いと言う。…頭に蛆でも湧いてるんじゃないだろうか。 「全部引っくるめてバギーは可愛いんだよ。」 そして所構わずキスの雨を降らせるのだ。 09雨の日に 外は大雨だが下っ端のおれは甲板にて見張りをさせられた。打ちつける雨が、身体の熱をどんどん奪っていくのがわかる。それほどに今夜の雨は冷たかった。 「そろそろ交代だぞ。」 振り返ればバギーが身震いしながら立っていた。 「いつもより来るのが早いな。何かあったか?」 「別にねぇよ。気分だ、気分。」 そう言ってバギーはおれの隣に並んだ。黙ってはいたけれどバギーと二人きりが嬉しくて、おれはちょっとだけ雨に感謝した。 10安っぽい、けど 「何だよ、これ。」 「土産だよ、土産。」 箱に入ってたのは装飾もほとんどない小さな銀の首飾り。別段高級品でもなさそうだった。 「なんとペアだ!喜べバギー!」 「誰が喜ぶか。…付けてやってもいいが、どうせスカーフで隠れるっつの。」 「付けてくれるだけでいいぜ。」 シャンクスが何を考えてるかはバギーには図り兼ねないが、とりあえず付けることにはした。 別に見えないのだからクルーに何か言われることもないだろう。首飾りをつけたことを確認すると、シャンクスは挨拶も短く自分の船へ帰って行った。 「何なんだ、アイツ?」 帰ってきたシャンクスにベンが話しかけた。 「シャンクス、あれは…」 「おう、昔離れ離れの恋人同士がお互いの愛を込めた首飾りなんだとさ。」 おれ達にぴったりだろう?とシャンクスは白い歯を光らせた。そんな代物とは露知らず、バギーは鏡に小さくわらった。 2009/12/03追記 2011/03/31追記 |