二人きりを所望する

「メリークリスマスバギー!!」
「おうおう、メリークリスマス馬鹿赤髪。」

船内は宴会で盛り上がるなか、どこからともなくシャンクスが現れた。バギーにとってはすでに日常の中に含まれていて、特別驚きもしない。ただ面倒になるだけ、そう割りきっていた。案の定いつものようにシャンクスは、バギーの肩に腕を回した。

クリスマスだからかシャンクスはいつも以上に機嫌が良いようで、珍しくここに来る前から酒を飲んでいるようだ。ぴたりと寄り添っている分、アルコールの匂いを強く感じる。こちらも折角気分よく飲んでいるのだから、ごちゃごちゃと騒ぐのは止そうと、バギーは別段抵抗もしなかった。

「なあバギー向こうで二人で飲まねえか?」

そう言いながらシャンクスは船長室を指差した。それに嫌だと首を横に振る。さすがに二人きりは経験上危険だと判断している。

「モージ、カバジ。お前らもおれと飲みてえだろ?」

飲みたいと言ってくれ。バギーがそう眼で訴えたが、それよりも強く、シャンクスの覇気が二人を圧迫する。

「そんなことないよな?お前らだけでも充分楽しいだろう?」

眼が笑っていない作り笑いを浮かべると、更に覇気を強める。滝のように冷や汗をかきながら、震える声で

「おっ…オレ達のことはお気になさらず…。」
「お二人で楽しんでください。」

こちらも作り笑いで返した。

(お前らぁぁぁ!!!!つか楽しむって何だよ!!!!)

バギーの声なき悲鳴が届くはずもなく、力なくシャンクスに引かれていった。




「クリスマスプレゼントはいるかバギー?」
「そんなのあるのか?」
「ちゃんと用意して来てやったぞ。」

喜べ。そう言ってバギーに話しかける前に勝手に置いてたのであろう、白い袋を持ってきた。ほら、とバギーに放り投げる。中を開ければ例年のごとく、バギーの好きそうな凝った装飾のついた指輪やら、どこかの古い国王の王冠などが乱雑に入っていた。その中でただ一つ、大事そうに包装されているものがあった。

だいたいこれこそが本命なのだが、大半バギーにとって何ら価値のないもの。去年は変な形の置物だったりする。
今は宝物庫の隅においやられていた。

「開けてみろよ。」

嬉しそうに催促するので、渋々封をほどけば小さく折り畳まれたそれ。

「何だこれ。」
「1/1スケールのオレ抱き枕カバー。」
「…派手に要らねえ。」
「いやーたまにしか会えねえとバギーも寂しいだろ?」

オレはバギーのやつを持ってると、自慢気にシャンクスは話した。バギーにとっては気味が悪い話である。ごみ箱入り確定だな、と小さく呟いた。シャンクスには届いてなかったようで楽しそうにクリスマスソングを口ずさんでいた。さて、とシャンクスはバギーに歩み寄る。

(やっぱりな)

シャンクスが考え付くことが分かっていながら、部屋に引き込まれてしまったことを悔やむ。後でモージとカバジは吊るし上げの刑にしようと思った。

奥歯を噛み締めるとバギーは少しずつ後ずさりする。が、構わずシャンクスは徐々に距離を詰めていく。バギーの足が何かにぶつかり、これ以上逃げれないことを知る。いやらしい笑みを浮かべながらシャンクスは口を開いた。

「わざわざベッドまで行くなんて、珍しく乗り気だな。」

言われて後ろを見れば確かにベッドがあった。そんなつもりは全くないのだが、シャンクスはバギー自らベッドに向かったと解釈したらしい。違うと反論するがシャンクスは耳に入れる気はないらしく、軽々バギーを押し倒す。

「…やっぱりこれが目的かよ。」
「うーん、半分かな。でもバギーと愛を育むのも恋人の務めだろ?」
「何が“愛を育む”だ。おれが一方的に喰われるだけじゃねえか。」
「でもバギーも好きだろ?」

こういうこと。
そう囁くとバギーを暴いていった。




「来年は何がいいかな。」
「…真ん中に穴の開いた座布団。」
「冗談だよな…。」




2010/01/07追記


******
なんじゃこれ。
シャンバギで甘いの目指したんですがね。
穴の開いた座布団…。
分かりますかね?
お父様方に聞けば分かると思います(^^;




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