電車に揺られて、胃の中の水分もいくらか消化されながら一緒に揺れた。気がした。全て源田のせいにしたい。自分じゃないと強く否定したい。だけどこの金属音のする薄っぺらい頭で考えても、どうも理由はこの頭にあるらしい。「そうやって人のせいにするところが佐久間だよな」「うるせえ。響く」「はいはい」酒に酔う自分を叩きのめしたいのだ。

「俺はしゃべる。お前はしゃべるな」
「は?なん」
「うるせえって」

言ってんだろ、源田の腕を力いっぱい抓るとこいつは楽しそうに悲鳴をあげた。今の俺、詩人みたいだな。正確には笑いながら俺を、仕方ない奴だなと隣で見てるだけなのに、上手いこと脚色すると映画監督も夢じゃないんだな。あ、金属音が喚く。うるせえうるせえ、俺以外はしゃべるなって、「佐久間、そろそろ痛い」ああもうこいつは邪魔してきやがる。舌打ちに失敗した。

自棄ではないがとにかくいつもの倍近く飲んだ。元々飲める方じゃない為に、源田の忠告も止めもきかずに限界まで胃に詰め込んだ。途中から見境無くなって日本酒やウイスキーを飲んでいたことは、源田が苦い顔で会計をしていて前頭葉で分かった。今度は俺が奢らされる番だ。千鳥足も千鳥足、視界までよく分からないで源田の支えで電車に乗った、如何せん終電っぽい。闇と闇がくっついて明かりが分からない。今夜は分からないことだらけだな。「源田ぁ、帰ったらやるの?」「酔った奴とするつもりはない」電車は無人。「えろぉー源田えろいなー」舌は上手く動いてくれていた。今日は俺が主導権握ってしまおうかな。酒のせいで欲が出てくる数歩前だ。「今日は俺がやっ」

「駄目だ」

源田はダイヤモンドのごとく頭の固いアンドロイド、と名付けておこう。ついでにダイヤモンドなわけなので誰にも割ることなど出来ないし、アンドロイドなので俺の気持ちも理解出来ない。源田、と撫でた声で顔を覗き見れば、全くの無表情、というか真顔で俺をじとりと見つめてくる。何だよ。「今日は、帰って眠るんだ」しごくお堅い男だな本当。頭を直して頬に空気を入れてすぐに抜いた。

暗闇の中走るこの乗り物は、一体何人抱えて冷たいレールを滑っているんだろうか。俺より頭身の高い隣の男は夢の世界への扉を開けようとしている。頭が前にこっくりといくのは、おそらくノックであろう。仕事が終わって無理やり連れて来られたから、こいつなりに疲れたのだ。まあ俺もそんなつるつるした氷のような冷たいやつではないから、そっとしておいてやろう。感謝しろ源田!冗談で源田の手を握った。

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