※93話の妄想がそのまま






彼は頬が膨れていた。と思うのはただの気のせいに過ぎず、実際は声が尖っていた。鈍感と言われる俺でも分かる、彼は、俺に、あの男に、嫉妬しているのだ。

「ヒロト、あれは仕方なかったんだよ」
「……」
「お前なら、エイリア学園にいた時に“お父さん”の下にいた男を知ってるだろ?」

「関係ないじゃないか」聞こえないような声で呟かれて自分自身で深く反省した。そうだ、彼はそれを気にしているんじゃない。俺は知っている。だからさっきから自分で分かってるじゃないか、ただそれを口にするのが怖いのだ。

「…でも、仕方なかったんだよ」

情けない声が出た。彼の顔を見ることが出来ない。泣きそうにしているのか、怒っているのか、沈黙からじゃ推し量れなかった。

「……イタリアの、」

声が震えていた。

「イタリアの、あの男は、円堂くんのこと“守”って呼んでた」
「……」

やはり、思った通りだ。彼の嫉妬の原因はそこだった。「守、って、普通に、さり気なく、馴れ馴れしかった」
「ヒロト」言うと彼は泣き出した。声をあまり立てず、悔しそうに、瞳の奥に嫉妬の炎を小さくちらつかせて。謝りようもない。彼の言いたいことは、フィディオに守と呼ばせた俺が許せないということ。嫉妬の対象が俺だということ。

「俺だって、円堂くんなのに、ずるい」
「ヒロト、きいてくれ」
「嫌だ!円堂くんはそうやっていつも」
「ヒロト!」

腕を引き寄せて抱きしめると、彼の嗚咽が止まった。「悪かった。反省する。だからきいてくれ」「え、んどう…くん?」

「俺のこと、呼び捨てていいから」彼の顔を見れば赤、彼の瞳に映る俺も彼に負けないくらい赤色に染まっていた。

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