「僕は汚い」

自己肯定から始まり自己否定に終わる。その繰り返しに嫌気がさしてるのは君だけじゃないんだよ。君の手も足も腰も爪も生殖器も、君を表現するのに疲れてるみたいだ。

「僕は汚い」

ああそうさ君は汚い。そうやって自分を卑下して賤しめて罵って挙げ句の果てには一変、賞賛さ。一回堕とすことに何の意味がある。意味もない言葉を幾度も吐いて飲み込んでの再生じゃ、君はいつまで経っても成長しないよ。そろそろそのつまらない遊びをやめたらどうだい。実にくだらない。

「僕のこの汚れは、一体誰が」

ききたくない聞きたくない。自惚れるのもいい加減にしないか。だって君、君を愛してくれる人を持っているのかい。いないだろうなあ、誰も君を見ちゃいないんだもの。まず君は、自分の体を見下ろしてみないとだめだよ。――ほうら、見た。見たね、今。確かに見たよね。分かるかい、君は誰にも愛されていない。手も足も腰も爪も生殖器も、みんな君から飛び出してっちゃった。彼らを最後にして、残るものは何一つ無い。君が君でいる証拠は、もうありゃしないのさ。

「もし、もし」

おや、あなたは誰だかな。こんな君に声をかけてくるなんてな。どちらさまですか。

「あなたにありがとうが言いたくて」

…あら、お礼なんて言っちゃってくれるの。嬉しいねえ、君が君だと分かってくれる人がまだいたなんて。どうして分かったんだい。君である標など、とうに逃げ出しているのにねえ。あなたは一体なんなんだい。

「すぐに分かりますよ。だって、私はあなたの一部ですもの」

……ああ、あなたは僕だったか。


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