――あ、もしもし?一之瀬くん?
――そうだけど。あのさ、秋、その呼び方前に直してって言ったよね。
――あっ、そうだった。えっと、一哉くん。
――はい、何。
――今日、私の親戚の子が試合で―…。
――……へぇ、それは良かったじゃないか。一年で出られるなんてすごいな、見てみたいよ。
――見に来るといいわ、今度の休暇の時にでも。そしたら旅行はお預けね。
――ええっ、そっかぁ、そうだなぁ、残念。
――一哉くんは旅行よりサッカーの方が好きなんでしょ。
――サッカーより秋と行く旅行の方が好きだよ。
――またまた。
――その親戚の子、秋に似てるんだろうなぁ。
――どうしてそう言えるの?
――何となく、そんな気がしたんだ。かわいい顔してるんだね、きっと。
――かわいいって…。男の子なんだよ?あの子ならそう言っても怒らないと思うけど。
――秋に似てるんだよ?まるで秋に子供がいるみたいじゃないか。
――えっ。
――いいよね、子供。かわいくて素直でさ。
――え、えぇそうね、私も子供好きよ。
――じゃなかったら親戚の子の親代わりになんてならないだろ。
――う、うん…。
――どう?そっちは楽しい?
――えぇ!最近は色んな料理をしているの。
――…料理かぁ。
――昨日はトマトリゾットを作ったわ。
――俺も秋の料理食べたいな。
――ふふ、帰ってきたらね。
――秋がこっちに来たらいいのに。
――わがまま言わないの。来月会えるでしょ。
――秋も会いたい?俺に。
――……会いたいわ。
――……あーあ、秋の親戚の子が羨ましいな。毎日秋といられるなんてさ。
――何だか今日の一哉くん、甘えん坊ね。
――久しぶりに秋の声聞いたからさ、何か、ちょっと気が緩んでるのかも。
――私も。一哉くんの声聞いたら安心したわ。
――来月までに三回は電話するね。
――三回?電話しすぎ、って監督に怒られないの?
――大丈夫。監督じゃなくてチームメイトが怒るから。またカズヤは女の尻を追っかけてるのか!ってね。
――ふふ、面白いね。
――それじゃ、そろそろ。
――うん、今日は一哉くんから切る約束だよ。
――前にそんな約束したね。
――いつも私が先に切るから何だか申し訳なくて。
――そんなこと気にしなくていいのに。秋が先に切ってくれないと落ち着かないんだよ。
――私だってそうよ。切ったあと、何だかそわそわしちゃって。
――はは、お互い様だね。じゃあ、今日は俺が先ね。次に電話した時は秋が先に切ってくれよ。
――分かった。
――またね。
――バイバイ。
わ
か
っ
た
だ
ろ
――俺、子供好きなんだ。秋、君によく似た子供が。