夜の影は至って簡素に闇色だ。影は必ずついてまわる。地から足を離せば影はただの「モヨウ」になるが、それは僅かな安寧を求めるアンニュイな所作に過ぎない。誰かがマニュアル通りにやれば皆もそうするように。

彼は一貫して、果たしてそうだっただろうか。口のきけなくなった今となっては知る由もない。自分は今までそうしてきた。その通りやれば干渉もなにもない、と決めつけた。しかし実際は逆手にとって真逆、この世に生をなくした彼はついに異業にのりだした。

「…ばかだよな」

彼の前で鎮座するおとこはそんな罵倒を呟いた。単なる独り言だろうか、いや違う。彼はきいている。おとこは何も知らず立ち上がってネコロブ彼を下ろし見た。光はおろか、闇までもが失せてしまっては影の行く末がない。おとこは露とも知らず歩きだしてしまった。

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