「傘、入れてよ」

まだ何も言っていないのにするりと左側に入ってきた、吹雪の肌は白い。「風丸くんの家まででいいから」そこまで、入れて。透明感溢れる肌だ。
吹雪の歩幅は小さく、いつものように歩くと吹雪が後ろに後退するように見えた。だから歩幅を合わせた、吹雪は不意に俺の傘を持つ手を握る。背筋に何かが走り、思わず身を震わせた。吹雪の鈍い声が、「どうしたの、風丸くん?ねえ」俺をゆっくり追い詰めていく。

とうとう家の前に来て、俺はポケットから鍵を出した。雨は勢いを減らして、今はぱらぱらと傘の上を遊ぶ具合だ。これなら吹雪も大丈夫だろう。傘を貸してあげることも出来る。吹雪、名前を言いかけ――動きを止めた。

「風丸くん、制服濡れちゃった。家入れて乾かせてよ。いいよね?」
「ふ、ぶ」
「なあに、どうしちゃったの。風丸くん、風丸くんったら」

俺は、この男が、

「固まっちゃったの?もう、濡れるよ?濡れるってば」

恐ろしい。





Don't you?

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