ポーン、ポーンと玉の跳ねる音がした。後ろを振り返り遠くを見れば、そこには自分がいる。小さな影だ。影はゆっくりこちらにやってきて、ついに前に立った。何だか不自然に近い。

「代われ」

そいつは急に口を開いた。しばらく呆気に取られて目の前の自分を見ると、自分は至って真面目な風だった。そうして長々とたっぷり半刻は過ぎて、自分はまだ静かだった。

「嫌だよ。君はもう僕の中で終わった人格だ。もう表にすることは出来ないんだよ」

申し訳ないね、言うと自分は鬼のような形相になって首を絞めてきた。ぎりぎり、縄を掴む音と共に気管が塞がっていく。可哀相な奴だ、自分はもう人間じゃない顔をしてまだ力を込める。何がそんなに悔しいのか。こいつは何度言ってもきかないので困りものだ。

「オレはまだここにいる!お前と一緒に、ここに」
「僕にそんなつもりはないんだ」

ぞっ、そんな顔をされて首が解放された。息苦しくないのに疑問を持って、自分はこちらを見てくる。何も痛くない。むしろくすぐったくてたまらなかったよ。ねえ、自分

「君が勝手に僕の中にいるだけで、僕としてはもう捨てた人格だ。そうだよ君はヒトじゃない、ただの人格さ。僕なんだ。だから表に立ちたいとかもう一度他人と触れ合いたいとかそういうの」

つまらないんだ。自分の輪郭が歪んだ。嫌だ嫌だと叫ぶ自分を傍観していた。消える。僕は今、

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