凸凹


あの船で見習いをやってた頃からおれ達は、本当にそりが合わないっていうかなんていうか。
相対するアイデンティティーの持ち主に出会ったかのように、お互いの意見を受け入れるなんて事は殆ど皆無で。

でも逆に言うと、おれの持ってないものはお前が持ってて、お前の持ってないものはおれが持ってて…それゆえまるでナットとボルトみたいにうまい具合に嵌ってたんじゃないかと思うんだ。

「だから、いまだにバギーに会いたくなっちゃうんだなぁ…」

四皇の一人、赤髪のシャンクスと恐れられる目の前の男は、いつも通りバギーの船に飄々と乗り込み、勝手知ったると言わんばかりに船長室のテーブルセットに腰掛けて、持参した上等な酒を飲みながらそんな事を語り出した。

酔っ払ったシャンクスは、まわりくどい話をポツポツといつまでも話し続ける。
目も虚ろで頬杖ついてる格好なんて、ただのだらしないおっさんだ。

いつも思うが、こいつが四皇だなんて、この大海賊時代どうかしちまってるんじゃないか。
バギーはシャンクスが酌してくれた酒を啜りながら、頭の中でそんな事を考えていた。

でもたしかに長い時間を共にすごしたはずなのに、こいつの考えが理解できた事は無かったなぁ…

まず自分ならガキを助けるために片腕を失うなんてまっぴらごめんだ。
シャンクスは自分の左腕が無い事なんて、蚊に刺されたくらいにしか思っていないのだろうけど。

ことの経緯をヘラヘラ笑って説明するシャンクスに、こいつは腕以外になんか大事なものまで一緒に喰われたんじゃないかと思ったほどだ。


「なぁ、片腕で不便な事とかないのか?」

「なんだ急に?」

シャンクスはグビリと杯を煽り、ゲフと一息ついた。

「まぁ片腕になってだいぶ経つしな。不便はほとんど無くなったが…ただ残念な事がある。」

「残念な事ねぇ…そりゃ、ざまーねーな。ぜひ聞かせてもらいたいね。」

バギーはニヒヒヒとわざと嫌味ったらしく笑いながら、シャンクスのグラスに酒を満たした。

シャンクスはグラスを受け取り、バギーの目をまっすぐみつめてこう言った。

「お前を両腕で抱き締められない事だよ、バギー」

「……………はあぁっ!?」

シャンクスは再びグビグビと酒を喉に流し込んでいく。

「テっ、テメー!何ハデにふざけた事言ってんだゴラァ!!」

「ふざけちゃいねーよ。両腕があればすぐにでもお前を抱き締めるのにっていつも思ってる。」

ハハハと、それはそれは楽しそうに笑うシャンクスに、バギーは負けじとグラスを一気に空にした。




「本当に残念だ…」

「…!」

グラスをみつめポソリとつぶやく声を聞いてしまったバギーは、一瞬考え自分でも理解出来ないような行動に出ていた。

「…ん?」

シャンクスは今まで話題になっていた自身の部分に違和感を覚え、目をそちらに向けてみた。

すると久しく見ていない、無いはずの左腕がそこにはあった。

「バギー?」

バギーを見れば、やはり思った通りあるはずの彼の左腕が無くなっていて、当初散々からかっていた片腕の姿に自分からなってしまっていた。

「…テメェの持って無いもんは、おれ様が持ってるんだろ…」

「…っ!」

真っ赤になって言うバギーを、シャンクスは宣言通り、強く強く抱き締めた。

「バギー…愛してるぜ…」

「…うるせぇハデアホ」


バギーはシャンクスの腕の中で、こんなに顔が熱いのはシャンクスの持ってきた酒のせいだ!と自分に言い聞かせていた。



end

ツンデレバギー(笑)
こんなふうにたまに二人で酒を飲んで欲しいvv
あとシャンクスにゲフってさせて満足




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