赤と理由と



それ以来

本当にシャンクスは、日課になっていたおれに告白する事をしなくなった。

つーか、それだけでなく、おれとの会話は必要最低限ってレベルになった。
前まではくだらない事で言い争ってケンカになり、気が付いたら二人揃ってレイリーさんに拳骨食らうなんてのが毎日だったのに…

「最近お前ら大人しいじゃないか?俺の打撃はお前らに鍛えてもらってたのになぁ」

なんて笑いながら件の副船長はおれの背中を平手でバシンとたたいた。
冗談で隠してはいるが、心配してくれてるのが痛いくらい(もちろん背中とは別の意味で)わかる。
それくらい俺たちはまったく一緒に居なくなっていた。
というより、周りが見ても明らかなくらい、シャンクスはおれの事を避けていた。

『あいつ、髪の色嫌いっつわれてムカついたのかなぁ…』

シャンクスがおれに無意味な告白をしなくなって一週間がたった。
最初の四日目くらいまでは、奴の変貌ぶりにイライラしまくりのおれ様だったが、さすがに会話がなくなって一週間にもなると、怒りを通り越して若干意気消沈…
結局シャンクスに問い質せずにいる。

『てかおれ、ハデにダセーな…』

「おいヤローども!あと半日もすると島に着くぞーっ!」

おれ様が柄にもなくおセンチモードに突入しそうになった矢先、ロジャー船長が船長室から飛び出し大声で叫んだ。
その直後、クルー達の雄叫びが様々な所から聞こえて来る。
そーいやここしばらく陸に上がってなかったもんな。
いくら海賊といえども、やっぱりたまには陸に上がりたいものだ。

『島に着いたら飲みにでも誘ってやろーかな』

思えば飲みに行こうと声をかけるのはシャンクスばかりで、おれの方から誘うのは、今までただの一度も無かった。
ちょうど良いタイミングだ。たまにはおれ様が誘ってやろう!
そんで酒飲んで話すりゃまるくおさまるだろ!
得意のポジティブシンキングを取り戻し、おれは島の詳しい情報を仕入れる為レイリーさんの元へ向かった。


「もう船を降りた!?」

「あぁ。なんでも、どうしても急いで行きたい所があるらしくてな。それこそ誰よりも早く飛んでったぜ。」


レイリーさんから話を聞いたおれは、船が着港するとさっそくシャンクスを連れ出す為船内を捜した。
だがヤツが行きそうな場所を片っ端から捜しているのに一向に見つからず、それでもキョロキョロと歩き回っていると、見兼ねた先輩クルーがシャンクスがもう既に船には居ないと教えてくれたのだ。

おれの方から歩み寄ってやろうとしたのにあいつは、知らなかったとはいえ、独りでさっさと島に向かっちまった。

その現実に、今日までに燻ぶっちまってたシャンクスに対する怒りが、おれの中で再び火を点しはじめる。

『あんのハデアホヤローーーーー!!そんなに独りで居たいなら勝手にしやがれッ!!もうおれは知らんッッ!!!』

独りで行きたい所なんて、あれだ!また女がいる酒場あたりに決まってる!
またその自慢の赤髪をネタに、女をひっかけておいしい思いをしているんだろう!!

結局おれが言った赤髪否定発言なんて、あいつは微塵も気にしてはいなかったに違いない。
いよいよ頭に血が上ってきたおれ様は、こうなりゃこっちもいい思いしてやる!!と弾かれたように船を飛び出した。


島の中心街に着いたおれは、良さそうな酒場をみつけるやいなや勢い良くその扉を開けた。
モノを見る目はある方だと自負してはいるが、鬼の形相で扉をぶち開けたガキんちょのおれに、まったく何もなかったかのように極上の「いらっしゃいませ」をお見舞いしてくれた店員に、この店が意識の高い店だとうかがえる。

もしかしてシャンクスが居るんじゃないかと、店の中をそれとなく見回したが、あのアホの赤髪は見当たらなかった。
『まぁ、店はここだけじゃないだろうしな』
見回した店の華やかさに、いいかげん嫌な事は忘れて楽しもうと、気持ちを切り替えおれは案内された席に座った。




店の造りに負けず劣らず酒の質も女の質も申し分なく、おれは予定以上の楽しい時間(男女のやりとりは無かったが)を過ごす事ができ、店を出る頃にはあんなに頭を占めていたシャンクスの事もほとんど隅においやられていた。
酒を飲んだ後特有のふわふわした気持ちのまま、おれは船へと戻った。

船に着くと、甲板の中央にクルーたちが集まってワイワイと楽しそうに話をしていた。
よく見ると船長やレイリーさんもその輪の中にいるようだ。
おれは先ほどの気持ちいいテンションのままその輪に近づいていく。

「みんな楽しそうに何やってんすか?」

「おお!バギー遅かったな!これ見ろよ」

近場のクルーに声をかけると、そのクルーはニヤニヤしながらおれを輪の中に入れてくれた。
気がつかなかったが、その輪の中心にみんなに囲まれるようにしてシャンクスが立っていた。
いつも通り麦藁帽を被ったシャンクスは、それまでおれの真向かいに居る船長たちと話していたみたいだが、クルーが呼んだおれの名前に気がつきこちらを振り返った。


「よお、おかえりバギー」

それは、久しぶりに聞いたシャンクスの何気ない声で。
しかし、この一週間がなんでも無かったかのようなシャンクスの声以上におれをハデに真っ白にしたのは・・・


「てめぇ・・・その髪・・・・・」


その顔も声も、おれの知ってるシャンクスに違いなかったが、ただひとつ違っていたのは、


その鮮やかな赤髪が








おれの知らない黒髪になっていた事だった。








「すげぇだろ。おれの髪とおそろいだなぁ!シャンクス!」

豪快に笑いながら、船長は麦藁帽を取ったシャンクスの黒髪をグシャグシャにかき回している。
そんな船長の声に何の反応も出来ないくらい、驚愕でおれはその光景を呆然とみつめていた。

「しっかし、港に着くなり急いで島に降りてったと思ったら、髪染めに行ってたなんてなぁ・・・お前の自慢だった赤髪を染めちまうなんて、どういう気持ちの変化なんだ?」

レイリーさんの一言に、おれはハッと我にかえる。

それまで船長に好きにされていたシャンクスは一瞬おれの目を見てから


「いいんすよ。おれの欲しい赤色は、おれの赤髪があると手に入らないんで。」


ひとこときっぱりと言い放ったシャンクスはもう一度、今度は熱くおれの目をみつめてきた。
シャンクスのひとことにクルー全員の頭の上には?マークが浮かんでいたが、その意味を理解したおれだけは何ともいえないおかしな表情で顔を真っ赤にするはめになった。
「何だバギー!お前その顔金取れるくらいおもしれぇぞ!!」と船長の興味がおれの顔になり、そのまま輪の中心が船長にいじられるおれ様になった。
その光景を見て楽しそうに笑っているシャンクスがいたが、それにつっこめない程おれは焦っていた。



『ちくしょう・・・やられた・・・!』


おれは無理やり理由を作ったのに、このハデアホのせいでおれの胸にある感情に理由が出来ちまった。
勝ったのはおれではなくシャンクスの方だったのだ。





「バギーvV好きだぜvVV」

髪を黒くしたシャンクスは、また日課のように毎日おれに告白をしてくる。
だけど、それが単なる暇つぶしでも、理由の無いお遊びでもない事をおれは知っている。

「うるせぇ、だまれ!」

だからおれが返す言葉も以前とは違くなった。
こいつが髪を染めてまで手に入れたいと言った赤色は、本当はヤツの手に入ってしまっているんだが、それはこいつには教えないでやる!
おれ様はお前が思っている以上に負けず嫌いなんだ!

「なぁ、バギー最近おれに嫌いって言わなくないか?」

「マジでだまんねぇーとハデにぶっ飛ばすぞっ!!!/////」



結局、早くおれに見せたいという理由で、短時間で毛染めをしたシャンクスがすぐ赤髪に戻ってしまったのは、また別の話。






end


*おまけ*


「なぁ、バギー」

「なんだよ」

「おれ髪だけじゃなくて、他も黒くしたんだぜ?」

「どーゆーことだ?」

「髪が赤いって事は、別の部分だって赤いだろ?」

「・・・テメェ、まさかっ!」

「これで、バギーと愛し合う時も安心だ!」

「・・・・」

「なんなら、これから確認するか?」

「よるなーーーーっ!このハデに変態野郎がぁーーーーーーっっ!!!」



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なんかよくわからん話ですね(そーですねー
とりあえず、バギーに必死なシャンクスが書きたかったんですが・・・








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