赤と理由と



嫌い

ウザイ

むかつく



これらの事に理由なんてあるのだろうか?
一般的にどうなのかは知った事では無いが、少なくともおれにとっては、飯を喰ったり糞したり、夜になったら眠りにつくのと同じくらい理由のない事なのだ。


「バギーvV好きだぜvVV」


逆に考えれば、この“好き”ってもんにだって理由なんて無いという事になる。


「おれはテメェなんかハデに嫌いだ」

「だからなんでだよぉ?」

本当にこいつは…
脳味噌に記憶機能は付いてねーのかっ!!って突っ込んでやりたいくらい、毎日毎日飽きもせずよくもまぁ同じ事が言えるもんだ。
とは言え自分も、毎度返す言葉は決まっているのだけれど。

いつも通りシカトぶっこいてるおれ様の後を、脳内メモリー0%のシャンクスは「なぁなぁ」としつこくついて来る。

いい加減このやりとりもウンザリだ。
こんなつまらん暇つぶしに付き合ってやる程おれ様の心は広くない。

そうだ

「そんなに理由が知りたいのか?」

振り返りそう言うと、シャンクスはびっくりしたような顔で「知りたい!」と何度も首を縦にふった。

理由なんて作ってしまえばいいんだ。
それも、こいつがこのおかしな遊びを二度と出来ない様な、ドハデな理由にしてやる!!

「おれはなぁ、自分の鼻がとにかく嫌なんだ」

「うん?」

シャンクスは、おれの第一声に釈然としないというような反応を示した。

「おれは自分の赤い鼻が嫌いで、赤い物はおれのコンプレックスを思い出させるから嫌いだ。」

「はぁ…」

「ゆえに髪が赤いお前も大っ嫌いだ!」

「!」

どーだ参っただろ!!おれ様の口八丁さをなめんじゃねーぞ!
頭の中の小さい自分は大笑いしながら小躍りしているが、そんな事微塵も感じさせないくらいおれは冷めた目でシャンクスを見つめていた。

「そっか…わかった」
シャンクスは、ポツリとそう言うと、おれ様の前から姿を消した。


勝った…

もうこれであのアホシャンクスもおれに世迷言のように好きだの愛してるだの言わなくなるだろう。

あいつがあの自慢の赤髪をどうにか出来るわけもないからな!
いつだかは忘れたが立ち寄った島の酒場であいつが話してるのを聞いた事があるんだ。






『お兄さん本当に綺麗な赤髪ね』

『この赤い髪は親父譲りでね。おれの生まれ育った村でも、赤毛に触れさせてって、女の子にモテモテだったんだぜ』

『へぇ〜、その女の子達の気持ちわかるわぁ。』






その酒場の女に、それはそれは得意そうに話していたのをはっきり覚えている。
得意そうっつーか、下心みえみえの口説きトークか?
きっとその後どっかの宿屋で、その女に髪だけじゃなくありとあらゆるところを触らせてやったんだろうよ!

……まぁそんな事はどうでもいいのだが



………



…とにかく!
シャンクスの赤髪は、女をものにする為の大切な要素なのだ。

『これでやっとくだらないやりとりから開放されるな!』

おれは気持ちも晴れやかに自分の持ち場に戻った。





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