言えない   承露 ※R18





※18歳未満(高校生含)の閲覧を禁じます。 傾向:性描写






「……珍しい、ね」
 前戯もほとんどなく脚を開かされ、露伴はのけ反るようにして喉を晒していた。
「承太郎さんが、っ、がっつく、なんて」
 痛い、と声に出すのを我慢しながら必死に呼吸を整えて、切れ切れに言葉を紡ぐ。承太郎は何も答えなかった。
 答えないまま、根本まで押し込んでようやくふと気づいた風に、サイドテーブルの引き出しに手を掛けた。それを露伴が制止する。ローションにつけられている人工的な匂いが、露伴は嫌いだった。

 急に承太郎が唇を重ねたせいで、露伴はまた溺れるように息が荒れた。それでも舌を絡ませ合う内に、痛みが段々と和らいでじんわりと快感の波が訪れる。
 唇を離して動いて、と呟いたのにやはり答えないまま、承太郎は覆いかぶさったまま露伴の瞳を眺めていた。露伴も見つめられるままに、承太郎のグリーンがかった瞳を見ていた。美しい海や湖畔や、兎に角そういう景色を眺めているみたいだと、ぼんやりと感じていた。

「……あ、わかった」
 不意に露伴が明るい声を出したので、承太郎も虚を突かれたように目を少し見開いた。それを見て露伴はやはり、その瞳が美しい景色のようだと頭の片隅で思った。
「ぼくに言いたいことがあるんでしょ」
 言われた承太郎は何か反論しようと一度口を開いて、結局閉じてしまう。帽子で視線を遮るくせが出て、思わず頭に手がのびた。帽子は被っていなかったので髪を手櫛でかき上げるだけに留まり、より視界を明瞭にしてしまう。

「……わかるのか」
 ひとしきり承太郎が狼狽するのを見て、露伴はつい微笑んだ。
「わかりますよ」
 承太郎の頬に触れて、そのまま指先で摘まんでみせる。わざと力を込めたせいで承太郎が痛そうに眉根を寄せた。それを見て、露伴はまた少し微笑む。
「言いたいのに言えないんでしょ?」
 承太郎が一瞬押し黙ったので、露伴は満足した様に指をパッと離した。
「……それは、スタンドの能力か?」
 訝しむ調子に、ついに露伴は声を上げて笑った。ムッとした気配がして、すぐにその笑いを引っ込めた。
「違いますよ」
 言いながら身体に腕を回すと、ようやく今の状況を思い出したように承太郎が緩慢に動いた。少し眉を顰めながら、露伴も力を抜いてそれに答えた。
「っ、好きな相手のことならね、普通わかるんですよ」
 白々しいことを言ったな、と、露伴はまた口の端に笑みを作る。けれどまた承太郎が動きを止めてしまったので、少し苛立ってその笑みを打ち消す。
「……そうか」
 承太郎の声が酷く真剣に聞こえて、露伴は戸惑った。
「……嘘ですよ。適当に言っただけです」
 目を合わせると、やはり承太郎の目は真剣で、茶化すのも怖くなる。思わずすぐに目を逸らして枕に横顔を沈ませた。

 ああ嫌だな。露伴が小さく独り言のように呟く。こんなことが気持ち良いんだもんなぁ、と。
「……露伴」
 今度は承太郎の方が戸惑う。
「承太郎さん」
 有無を言わさないように、露伴はその承太郎に縋る。動いてとまた囁くと、承太郎は一度長い瞬きをして行為を再開した。
 奥を抉られる度に快感で思考が霧散しかける。それでも露伴の脳髄の中では、承太郎が言おうとしたことが頭の中でぐるぐる回って離れない。

「承太郎さん、ぼくはね」
 悦びながら露伴は想像する。帰るんでしょ、なんてすっ飛ばして、何時の便に乗るのか、いっそ訊いてやろうか。
「ぼくは……ああ、ぼくも」
 喘ぎながら露伴は考える。言わないなんてずるい、ぼくのスタンドに頼ろうとするなんて、ずるい。
「色々言いたいけど、何にも言葉にできないや」
 嗚呼やはり言ってしまいたい。
「……承太郎さん、好きだよ」

 言わずに読ませようとするあんたが、好きで嫌いだ。



 2013/04/23 


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