化けの皮   仗露 ※R18





※18歳未満(高校生含)の閲覧を禁じます。 傾向:性描写





 こんな仗助は知らない。
 もがいてももがいても、縫い付けられたように抑え込まれた身体は動かせず、露伴は困惑混じりに仗助の顔を睨みつけた。
 
 睨まれた仗助は応える風もなく、涼しげな顔で露伴の下半身を服の上から撫で上げる。ベルトに手をかけられ、露伴はまた身をよじって逃げようとした。
「う……や、めろッ」
 ようやく絞り出した声は酷く弱々しい。両腕を重ねるように頭上で掴まれ、露伴は首を振ることさえままならなかった。
「やれって言ったのは先生っしょ。今更何言ってんの」
 それに仗助は軽い調子で答えた。口元にはいつもの余裕の微笑が乗せてあったが、その瞳は普段と比べ物にならないほど冷ややかに露伴を見つめていた。ゾワリ、と、血の気が引いた。 


 恋人としての付き合いをはじめてから、まだ数日も経っていなかった。良い子ぶるなと露伴が野次るのを、仗助はいつも困ったような顔で躱す。それが、付き合い始める以前は定番だった。
 今日も同じように、露伴は仗助をからかうつもりで襲う勇気もないんだろ、と笑って煽った。しかし仗助がニヤッと笑いながらあるよ、と答えて、一遍でそれまでの均衡が壊れた。

 じゃあやってみせろよ、と。
 言った瞬間、床に押し倒され首筋に噛みつかれた。それだけで露伴は息を飲み、すぐに仗助の身体を引きはがそうと滅茶苦茶に暴れた。
 仗助は一瞬嫌そうに顔をしかめ、露伴の頬をパシッと小さく叩いた。ほとんど痛みもなかったが、露伴はその仗助の行為に酷く呆然とした。身体を触られ、ハッと気付いた風にまた暴れようとする露伴の両腕を、仗助は片腕だけで縫い止めた。

 今も抵抗しようとする露伴を無視して、仗助は片手だけで露伴の下着ごと一気にズボンを下げる。羞恥心か恐怖か、もしくは両方からか、露伴はその瞬間思わず目を閉じた。
「冗談、だろ……」
 露わにされた下半身を自分で見るのが嫌で、露伴は顔をできるだけ逸らす。しかし太ももから舐めつける様に指を這わされ性器に触れられた時、身体中が震えるように反応した。
「ッ……おまえッ、調子に乗るな!ガキの、くせにッ」
 怒りながらも、頭がついていかずに露伴は途切れ途切れの声しか出せなかった。
「女も男も知ってるし、タチもネコも経験あるけど」
 仗助はそれをいなす様に、そっけない口調で返す。
 思わず絶句する露伴に仗助は、いつもの人懐っこい笑みをして見せる。しかしその目が笑っていないのに、露伴はようやく気付いた。
「昔からモテるんっスよ、おれ」

 中心を握られ、露伴の喉から声にならない悲鳴が上がる。仗助は手を緩く動かしながら、露伴を覗き込むように顔を近づける。
「あんた、童貞だし処女だろ?わかりやすいっスねぇ」
 カッとなって、口を開く。しかし反論することができずに、露伴は言葉が出なかった。その間隙を突いて、仗助は露伴の口に舌を滑り込ませた。

 閉じようとしても、口の端から親指が捻じ込まれそれを阻止される。自由になった手で肩を押し返そうともがいたが、覆いかぶさった仗助はビクともしない。目を見開いて抵抗しようとしたが、仗助の射殺す様な視線にやがて耐えられず、目を瞑った。
 口腔を無遠慮に蹂躙されて息ができない。仗助の舌が歯をなぞり、逃げ場のない舌を強く吸われる。思わずゾワリとして、肩を必死に掴んでみせたが仗助は余計舌を捻じ込んでくる。苦しいのが快楽染みた刺激になったのに気付き、口の中にさえ性感帯はあるんだったと脳裏に浮かんだ。
 唇が離れる頃には、露伴は腕にも身体にも力が入らなくなっていた。息が上がったままぐったりとした露伴を見て、仗助はまたニヤッと笑った。
「何?キスもはじめてだったの?超かわいいっスね」

 床に放りだしていた鞄を仗助が引き寄せた。取り出した物を目の前でプラプラと見せつけられ、露伴もそれが何なのかに気付いてしまう。また血の気が引いた。
「はじめてなら、余計きちんとしねぇとなぁ」
 中身の減っているローションのボトルも封が切られたゴムの箱も、キスの衝撃と相まって、先ほどの経験豊かだという言葉に真実味しか与えない。
 起き上がろうとした肩を掴まれ、身体を反転させられるようにまた床に押し付けられる。バタつかせた足を膝で抑え込まれ、鈍い痛みが走った。

 冷たい液体が露出した下半身に擦り込まれ、上ずった声が露伴の口から洩れる。力抜けよ、と覆いかぶさる仗助が囁くのさえ、露伴の頭を占領して物を考えさせない。
 はじめての感覚に、痛みよりも恐怖が露伴の中に先行した。ぐちゃぐちゃとした酷い水音で、ようやくゴムをはめた指で抉られているのだと理解する。
「いっ、あ、……だ、めだ……仗助ッ」
 無意識に、涙が目に浮かんだ。
 首を振って拒絶する露伴を、仗助は今度は頭ごと抑え込む。指を増やすと、奥まった良い場所にあたったらしく、露伴の身体がビクリと撥ねた。
「駄目じゃねぇっしょ。こういう時はイイって言うんスよ」
 まだ首を無理に振って、逃げるように露伴が腕を伸ばして空を切る。その手を掴んだ所で、仗助は一度動きを止めた。

「先生、指先、超冷たいね」
 仗助の呟きに、露伴も正気に戻ったような気になって力を抜く。また、身体ごと反転させられて顔を覗き込まれた。
「ごめんね先生、怖かった?」
 困ったような顔でそう言って、露伴の頬に触れるだけのキスを何度も降らす。その仗助の様子を見て露伴も一気に緊張が解ける心地になった。

「でも止めてあげねぇよ」
 しかし急に性器を擦られ、露伴はまた短い悲鳴を上げた。
「大丈夫、先生が気持ち良くなるまでおれが全部教えてあげる」
 その悲鳴が甘い響きを持ち始めたのに、仗助も気付く。信じられないという顔で見つめてくる露伴に、もう一度触れるだけの優しいキスを落とした。
「女みたいに喘いで、縋ってくるまで犯してあげる」
 仗助の柔らかい声が、露伴には恐ろしかった。

「だから逃げるんじゃねぇぜ、露伴」


 恐怖に混じった自分の中の悦びに、露伴はまだ気付かない。



 2013/02/22 


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