お酒 と ギャップ萌え
03*




※こちらのページには性的表現がございます。苦手な方・18歳未満の方はお戻りください。
























外に出ていったかと思えば、いきなり帰ると言った俺に、矢島は「絶対彼女だぁ〜」と騒いでいたが、山下先輩に任せてすぐに店を後にした。

大通りでタクシーを拾い、20分ほどで尋之さんの家へ着いた俺はシャワーを浴びてベッドの上で少し横になった。
尋之さんが帰ってくるまでにあと10分はあるだろうと、酒のせいで重たい瞼を閉じる。

正直、電話口でもわかるほどに酔っている尋之さんは初めてで、少し緊張する。
甘ったるい雰囲気とあの鋭い眼差しを同時に向けられたらどうなってしまうんだろう。

バクバクとうるさい心臓を手で抑えようとするが、全く意味はない。

眠れるわけでもなくベッドの上でじっとしていると、玄関から物音がした。

「はるちゃん」

ベッドから降りて廊下に出ると尋之さんが靴を脱いで両手を広げて笑っていた。
少し赤らんだ顔が珍しくてじっと見つめると、首を傾げながら近寄ってきてその勢いのままぎゅっと抱きしめられる。

「ただいま、はるちゃん」
「あ、お帰りなさい、尋之さん。お疲れ様です」

背中に手を回して抱き返すと、いつもと比べて強い力で抱き返された。
スーツ姿ではなく、私服姿の尋之さんの高い体温がじんわりと自分の身体に移る。

「んー・・・はるちゃん、はる」
「はい、なんですか?」
「ふふふ」

上機嫌な尋之さんは抱きしめたまま俺の首に唇を寄せ、そのまま滑らせて耳を齧る。
ピクッと体を揺らした俺に楽しさを覚えたのか、甘噛みを続ける尋之さんの胸に手を当てて押し返すが、相変わらずびくともしない。

「ちょ、尋之さん」
「んー?」
「あ、のっ、ん、ちょっと待って」
「んー」

熱を持った口内がいつもと違いすぎて、酔いは覚めてきているというのに顔が熱い。

「う、んんっ、尋之さんっ!」
「ん?」
「か、顔!顔が・・・見たい」

羞恥心を殺してそう告げると、ピタッと動きを止めた尋之さんがようやく耳から口を離す。
しかし、逆に恥ずかしさから尋之さんの胸に額を当てた俺のせいで視線は交わらない。

「顔、上げて」
「う、あの・・・」
「はる」
「あ・・・」

顎を掴まれて無理やり上を向かされると、酒のせいだけではない熱が籠った視線を目の当たりにしてしまい、さらに顔に熱が集まる。さらには、恥ずかしさから涙が浮かんできて、目の前にあるはずの尋之さんの顔が ボヤけてしまう。

「あー・・・なんでそんな、かわいいの」

近づいてきた尋之さんの顔に、ぎゅっと目を閉じると噛み付くようにキスをされる。
熱い舌が自分の舌に触れて、思わず逃げるように引っ込めてしまったが、尋之さんは逃がさないというように追ってきて、最終的には絡め取られてしまった。

「んっ、は、あ」

口の端からツーっと唾液が垂れるのを感じて少し顔を捩ると、両手で顔を掴まれ、垂れた唾液を掬った指が口の中へそれを戻した。いつもだったら絶対にやらない尋之さんの行為に、思わず閉じていた目を開くと、尋之さんの鋭い目に捕まる。

そのまましばらく見つめ合いながらキスをして、満足した尋之さんは息の上がった俺を満面の笑みで見つめていた。

「んっとに、なんでそんなにかわいいの」
「っは、あ、かわいく、ない、です・・・」

この甘ったるい視線を受け続けたらドロドロに溶けてしまいそうだと、胸にもたれ掛かってその目から逃げるが、逆に身体が捕まってしまった。
そして男としては情けないほどに軽々と持ち上げられて、ベッドへ連れていかれた。

押し倒すように降ろされ、ゴムの緩いスウェットを脱がされる。
トレーナーも首元まで上げられて、平らな胸を愛おしげに撫でられると腰が揺れてしまう。

「はるちゃんに会いたいなんて言われたから、もう我慢できなかったよ」
「ん、あ、あの、仕事に、支障なかったですか?」
「え?あぁ、全然。行かなくてもよかったくらい」

宇野さんから聞いた限りだと絶対そんなことはないはずなのに。
こともなげに言い放った尋之さんは、胸元へ口を這わせてゆっくりと愛撫する。

触れる舌が熱い。酔っているだろう尋之さんは、いつも以上に丁寧に、というよりしつこく感じる。
スルッとボクサーパンツの中に入った手は、陰茎に直接触れることなく、やわやわと肌を撫でるだけだ。

「ん、あっ、う」

もどかしいそれに、膝を擦り合わせると、尋之さんがクッと喉で笑う。恥ずかしい、けど、いい加減ちゃんと触ってほしい。
視線で懇願しても微笑むだけの尋之さんに、痺れを切らして動き回る手をぎゅっと掴む。

「尋之さ、ん」
「うん?」
「あの、も、ちゃんと・・・」
「ちゃんと?」

いつもより数倍も意地の悪い尋之さんは、手首を掴まれていても動かせると撫でる手を止めない。

「う、んんっ、も、やだっ」
「なにがやなの?」
「ちゃ、んと、触って、ください」
「触ってるよ」
「そうじゃ、なくって」

首を振って抗議するが、全く聞く耳を持ってくれない。ついに目から涙が溢れ、両手を伸ばして尋之さんの首に抱きつく。
ぐずぐずと鼻を鳴らす俺に、尋之さんは嬉しそうに笑ってパンツの中から手を出した。

「かわいいね、はるちゃん」
「ん、ん、も、わかり、ましたから」
「ごめんね、かわいくていじめすぎちゃった」

頷いて抱きつく腕に力を込めた俺に、申し訳なさのかけらもない謝罪を口にした尋之さんは、俺のパンツを脱がす。
そして、ようやく自身に触れられ、勃ち上がったそれを嬉しそうに見つめる。

「気持ちいい?」
「ふ、う、ん、んっ、あぁっ」

抱きついたまま首を縦に振れば、尋之さんは動かす手に少し力を込める。
俺よりも俺の身体を知り尽くしている尋之さんに愛撫されてしまえば、俺は簡単に達してしまう。

肩で息をする俺の腕を首から外してサイドチェストからローションとゴムを取り出した尋之さんは、なぜか一瞬動きを止めた。どうしたんですか、と口にする前に腰の下に枕を入れられて、ローションがついた指がスルッと中に入ってくる。

「う、あっ」

強めの力でグリッと中を押され、浮いてしまった腰を尋之さんの大きい手で押さえ込まれた。
逃げようのない快感に揺れる腰をじっと見つめる尋之さんに、内心首を傾げる。

酔いが回って気持ちが悪くなってしまったんだろうか。

不安になって視線を向けると、グチグチと広げるように動かしていた指をズルっと抜いて、俺の脚を左右に大きく開く。
やっぱりこの体勢は何度経験しても恥ずかしい、と、目を細めるとフッと笑った尋之さんがチュッと頬にキスをしてくれる。

いつも、俺が恥ずかしいとか不安だというタイミングで降ってくるキスは心を落ち着けてくれた。

脚の間にグッと身体を入れ込んだ尋之さんは、何度も俺の脚の付け根を撫でる。
くすぐったいような、気持ちがいいようなその感触に腰を揺らす。そして、やっぱり恥ずかしさは拭えない俺は顔を横に背けて枕へ半分埋めた。

「はるちゃ、ん」

小さく呟いた尋之さんに、くる、とシーツを握りしめて待つが、しばらくしても尋之さんは一向に動かない。

「どうしました?」

顔を俯いたまま、声をかけても反応がない尋之さんに手を伸ばすとビクリと肩を揺らしてゆっくりと顔を上げた。
その顔を見て、驚きと疑問から思わず目を見開く。尋之さんの目にはうっすらと涙が溜まっている。

「え、え!?なんですか?俺なんかしましたか?」

身体を起こして向かい合わせに座ると、尋之さんが首を横に振りながら申し訳なさそうに口を開いた。

「飲み、すぎた・・・」
「・・・あ」

ジーンズの前をくつろげた尋之さんの陰茎は少しも勃っていない。

「あー・・・ありえない・・・」
「え、いや!そういうこともありますから、ね?」

見るからに落ち込んでいる尋之さんを膝立ちでぎゅっと抱き締めると、強い力で抱きついてきた。そして、甘えるように肩に額を擦り付けてきて思わず胸がギュッと締め付けられる。

か、かわいい・・・。

普段尋之さんが俺に言ってくる言葉がそのまま浮かんできて、頭を撫でると、肩にグリグリと顔を埋める。

「気持ちいいんだけど、なんでか、勃たない」
「うん、大丈夫ですよ。気にしないでくださいね」
「ほんと、もう一生酒なんて飲まない」

痛いくらいに抱きついてくる尋之さんの気持ちは、男なのでよく分かる。今は使うことがない自身が、例えばいざというときに使えなかったとなったら、きっと情けないというか、申し訳ないというか。そんな感じになるだろう。

「はるちゃんも、お酒飲んできたのに・・・」
「俺、意外と強いんですよ」
「そうなの・・・もう本当に、一生飲まない」
「えぇ・・・俺は尋之さんとまったり飲むの好きですよ」

ふふ、と、普段はあまり見せてくれない弱って甘えたがりな尋之さんが可愛くて笑みを溢すと、顔を上げた尋之さんがチラッと視線を向けた。

「・・・がっかりしてない?」

不安げな声でそう言った尋之さんに、思わず自分から軽いキスをする。
尋之さんが、普段俺に対して可愛いと言いながらキスをいっぱいしてくる気持ちが、少しわかった気がする。決して、自分が可愛いと思ってるわけではないけど。

「してないですよ。むしろ、新しい、可愛い尋之さんが見れて満足です。それに、これからもずっと一緒にいるんですから、いくらでも、何回でもできるじゃないですか」

いつもとは立場が逆転している、と思うと笑顔になってしまう。尋之さんの頬に手を当てて、ゆっくり撫でるとなぜか大きく溜め息を吐かれる。変なことを言ってしまっただろうかと手を引っこめようとしたが、尋之さんの大きい手が上から包み込むように掴んだ。

「こんなにかわいいこと言ってくれてるのに、微塵も反応しないなんてね。あ、そうだ。録音しといて明日に備えようかな」
「・・・え?」

あれ、さっきまでの可愛かった尋之さんはどこにいってしまったんだろうか。
掴んだ俺の掌にチュッと音を鳴らしてキスをした尋之さんはいつも通りの笑みを浮かべていた。

「本当にごめんね、はるちゃん。明日は、期待しておいてね」

できれば、もう少しあのまま可愛い尋之さんでいてほしかったと苦笑いを浮かべた俺は、尋之さんには酔いすぎないようにしてもらおうと心に誓った。






end.



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