たからもの | ナノ


きぃぃいんこぉぉおんかぁぁあんこぉぉおん♪


なんとも腑抜けたチャイムが、4限の終わりを全校生徒に伝える。


「……いつ聞いても間抜けなチャイムだよね。」


「確かにね。」

教科書をしまいながら、ぽつりと呟くと返事が返ってきた。いつのまにか千鶴ちゃんがいて少々驚いたが、気を持ち直す。

そして、彼女といつものように世間話をしていると、


はげしーきー、かーぜにーなーれぇー♪
このいn…ピッ


どうやら、メールが来たらしい。


「…何気、名前ちゃんて、むごいよね。」


「え。」

ポツリと何かこぼした彼女に聞き返すが、なんでもない!の一点張りだった。


な、なんかしたかな…、私…。

千鶴ちゃんの言葉は、余りに小さくて聞き取れなかったが、まぁいいかと思い詳しくは聞かなかった。



とにかく、今来たメールを読む。

宛名はなんと、あの沖田先輩からだった!

緊張でか、少し指先が震えていた。


開く、を押し、中身を読む。



--------------

人名:沖田先輩

件名:無題
____________

屋上でお弁当食べるから、今から5分以内で来てね☆

来ないと……ふふふふふ☆


-end-

--------------


…え、なんかめっちゃこわいんですけどーーー!!!
何!?行かないと私は何されるわけ!?


携帯を見つめ、固まっていた私を心配して、千鶴ちゃんが声をかけてくれる。


「大丈夫?名前ちゃん?」


「あはは☆大丈夫!!…多分。」


「多分!?」

楽しく会話をしているが、私は内心焦りまくりだった。

とにかく、5分以内に…って、もう3分近く済んでるーーーー!!


名前ちゃんショーック!!



「ご、ごめん!!千鶴ちゃん!!実は…!!」


「あ、もしかしてお呼び出し?いいよいいよ!!気にせず行ってきなよ!」


「あ、ぁぁぁありがとぉぉぉおお!!また今度何か奢るね!!」


そう彼女に告げ、全速力で教室を後にした。



「……大丈夫かな…転んじゃわなきゃいいけど…」


「おーい、千鶴ー!!メシ食おうぜー!!」


「あ、うん!!平助君ちょっと待ってー!!」

千鶴と平助は、仲良しメンバーが集まっている中庭へと歩いていった。










片手にお弁当、もう一方にはイチゴミルク。

なぜかって?


沖田先輩のご機嫌取りにですよ!!

教室でた時点で5分過ぎてたんで、あきらめました。

ええ、腹括りましたよ!!どんとこいやぁ!!


……心の中ではいきがっていますが、体は緊張でガックガクです。



屋上のドアの前で私は動けずにいる。


『どどどど、どうしよう!?』


ただでさえ、一緒に居るだけで緊張するのに…!!

ええい、仕方ない!!と自分を納得&応援し、ドアノブを回した。



ギィィイ…

さび付いたドアは音を立てながら開いていく。


そこには、先輩の姿は無かった。


広々とした屋上は日の光を反射させながらそよそよと風に吹かれていた。


「…え。」

さすがに私の思考はとまってしまう。

ドアノブを持ったまま、硬直してしまった。



『…え、ぇぇぇぇええええええ!!!!!』


心の中で絶叫し、あたふたする。


もしかして、呆れて帰っちゃったとか!?
どうしよう!…嫌われた…?

ただ、いやな思考しか出来なくなってしまった。


【嫌われた】という単語しか頭には残ってくれず、プチパニックを起こす。


なぜか視界がぼやけてきた。


『……どうしよう…どうしよう…!!』

焦って焦ってお弁当とジュースを振り回してしまう。

中身はきっと綺麗に混ざっているだろう。


そんなことも気にしないくらい、動揺していた。


そんな時、


「…出入り口に突っ立ってられると、邪魔なんだけどなー。」


後ろから声をかけられ、びっくりする。

体がびくってなった。


「ぅえ、す、すみませ…て、きゃ!」

どこうとしたら、何故か後ろから抱きしめられた。


『な、ななななな…!!!』

赤面し、固まる。
本日二回目の硬直だった。


「あー、よかった。見つかって。」

ぎゅーっと、抱きしめる力が強くなる。


この声は…


「沖田先輩!?え、帰ったんじゃ…」

「ん?君があんまり遅いからさ。迎えにいったんだよ。」

「え、お手数かけてすみません…。」

後ろから抱きしめられているため、彼の表情は分からなかったが、声から安堵の様子が伝わってくる。










私が謝ると、ほんとだよー。と少し笑いながら開放してくれた。


「で、名前ちゃんは何で遅れたのかな?」

「う…怒らないでくださいね?」

「内容によるね。」

「え…。」

「あはは。怒らないから、言ってごらん?」


優しく言う沖田さんに胸がときめいてしまう。

きっと私は赤面しているだろう。


もじもじしながら、小さな声で告げる。


「……メールに気づくのが遅くって、それでお詫びにこれ買ってたんです…」

そういい、イチゴミルクを差し出す。


「これの為に…?」


「ほんっとに、遅れてすみません!!」


「……ぷっ」


深く頭を下げて謝ると、上から笑い声が。


……ぷっ…?え、あたし笑われてる?え、何故!?

困惑し、顔を上げることさえ忘れた。


「…あはは、もー、名前ちゃんかわいいー!!」


「なっ!!?」

いきなりそんなことをいわれ、赤面し、思い切り顔を上げた。



「あはは、そんな事別にどーでも良かったんだよ?」

くすくすと笑っている彼。


「え、でも…メール!!」


「…あぁ、そういえばそんな事書いてたかも。」


「なっ!?」


「じゃ、罰が必要だね☆」


「星を飛ばしながら言わないで下さい!!なんか身の危険を感じます!!」


一生懸命彼に伝えるが、まるで聞こえてないかの様にオール無視だ。


うーん…と唸りながら考えてる。


くそぅ…かっこいい…!!


「あ、いいこと考えた♪」

手を打ち、ニコニコ笑顔でそういう先輩。




正直、逃げ出したいです。



いやな予感しか感じられません。




逃げようとしてもがっちりと(いつの間にか)腕を掴まれていて逃げれない。



…くそう!!


ニコニコと私を見つめる二つの瞳。


まるで、『それはどんな内容ですか?』とでも聞けと言っているかのように。


どんだけSなんだ!!この人は!!










見つめられている、ということから私はどんどん恥ずかしくなっていった。


早くこの状況から逃げ出したくなり、私は早口で彼に言う。


「それは、どんな内容なんですかっ!?」


その一言を聞き、沖田先輩はにっこりと満足したように微笑んだ。



…見とれてしまったのは私だけの秘密。



「くすっ。じゃあ…」


そこで一度区切り、私の様子を見ている。


何この焦らしプレイ!!


何故か緊張してきた。



「キス、して?」


「はっ!?」


その一言に私は目が点になった。


少しガラ悪く感じるがそんなこと無視。



「いや、だからキスしてよ。名前ちゃんから。」


「ぇえええ!!!いやいやいやいや…!!無理です無理です!!」


「何で?」


「恥ずかしいじゃないですか!!」


真っ赤になりながら彼に抗議するが、笑われてしまった。



「あはははは!!じゃないと、お仕置きにならないでしょ?」


「んなっ!」


「そうでしょ?だって、この僕を待たせたんだもの。」


「うっ。」


「それに、君も申し訳ないと思ってるんでしょ?」


「それは、そうですけど…」


なかなか渋る私に沖田さんは何故か俯く。


「…名前ちゃんは、僕のこと、嫌い?」

しゅん、としながらそんな事を言う。


「……先輩はずるいです。」


「あはは、よく言われる。」


そんな悲しげに言われると反論できないじゃないですか。


この子悪魔めっ!!


なんて心の中で悪態をついてみるが、実際私は先輩のことがその、す、好きなわけで…。


嫌いになんかなるわけないじゃないですか。


それを知りながら…!!

ほんともう、ずるいとしかいいようが無いじゃないですか。










「…ほ、ほっぺでもいいですか…。」


「えー。」


「………。」


「仕方ないなー。」


渋々…という風にいう先輩。


そして、意を決し先輩に屈んでくださいと頼んだ。


先輩は背が高いため、ちっこい私は全然届かないのだ。

軽く10センチは差があると思う。


屈んでくれたおかげで、背伸びをすれば届く距離にまで縮まる。


だが、やはり恥ずかしいのは変わらず。

腹を括ったつもりだったが、ここに来てものすごい羞恥が襲ってくる。



「……。」


「…出来れば早くして欲しいんだけど…」


「うぇ、す、すみません!!」


今先輩の体制は中腰だ。

さすがに長時間はしんどいと思う。


なんだか申し訳ないな、と思った。


その思いが私の背中を押したのかは定かではないが、私は決心をつけることが出来た。



背伸びをし、先輩との距離が狭まっていく。


すると、なぜか悪戯心が芽生えてしまった。


そして愛しさも。


目をつぶり、待っている彼がどうしようもなく可愛く感じられた。


腕を先輩の首に回し、キスをする。



「!」


先輩は驚いたように目を見開く……気配がした。


なんせ、私も目をつぶっていたから、真実かどうかは分からないんだけど。


そして、先輩は私をぎゅうっと抱きしめる。



私の心は幸福で満たされていた。



そして、二人はそっと離れた。


気恥ずかしくて彼を直視できないで居た。










どちらが喋ることもなく、沈黙が降りる。


だが、その沈黙は苦しいものではなかった。



そして、意を決し私が口を開こうとした時---!!



きぃぃぃぃいんこぉぉぉぉおんかぁぁぁぁあんこぉぉぉおおん♪


この学校特有のうざったいチャイムが鳴り響いた…。


「…チャイム、なっちゃいましたね。」


「そうだねー。」


「あ、お弁当食べ損ねちゃいました!!」


「あ、ほんとだ。」

そして、二人見つめあい、同時に笑い出した。


「あはははは、お腹空いてたのにねー!」


「あは、あはは!すっかり忘れてました!!」


笑ってはいたが、内心『授業中なったらどうしよう!!』と、少し焦っていた。



「あはは…!とにかく、教室戻ろうか。」


「そ、そうですね!」


少し笑いが収まり、二人は体を帰る方向にむかせる。


「あ、名前ちゃん」


「?なんですk」


振り向くと先輩のドアップが。


…はい?


唇にはやわらかい感触があった。

…って、私は変態かっ!?

なんて突っ込むものの、頭が追いついていけていない。


ふっ、と先輩が離れた。


「お返し」


にっと笑いながら、呆然としている私を置いて屋上から出て行く。



「……な、ななななな!!!」


やっと、意味を…ていうか行動?を理解した私は、一気に赤面し一人残された屋上で叫んでいた。





〜昼休み、屋上にて〜


「あ、遅かったね、名前ちゃん…って、どうしたの!?」


「〜〜〜〜!!」


「顔真っ赤だよ!?熱でもあるの!?」


「うわーん!!千鶴ちゃーん!!」


「だ、大丈夫っ!?」


「恋心を奪われましたぁ〜!!」


「はっ!?」


『もっと大好きになっちゃったじゃん!!
責任とってよね!!沖田先輩!!』










お昼休み、屋上にて。





*END
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