■ヤンデレラとガラスの靴
昔々あるところに、俗に言うヤンデレの働き者の青年がいました。
彼は優しい両親と共に幸せに暮らしていましたが、ある日母親が病に倒れ亡くなってしまいました。
其れから父と二人の生活が続いたある日、「青年には母が必要だろう」と考えた父は二人の娘を持った未亡人と結婚しました。
暫くは5人で幸せな生活が続いたものの、突然父親が病気で帰らぬ人になってしまいました。
血の繋がった家族を失った青年は嘆きました。しかし彼を襲った悲劇はそれだけではなかったのです。
継母は彼に言いました。

「お前は今日からこの家の召使だよ。この家に置いてもらいたかったら一生懸命働くんだね」

そして青年の部屋は屋根裏部屋へと移され、服も地味で質素な服のみ与えられ、その他の服は売られてしまいました。
こうして彼は今までの幸せな暮らしから一変、召使としての生活を送ることになってしまいました。
また、彼は「夜宵」とい名前を持っていましたが、継母や二人の娘からは「灰かぶり」という意味の「シンデレラ」と呼ばれるようになりました。
シンデレラは元々働き者だったのでしっかり働きましたが継母や二人の娘はそれが気に入らず、何かと文句を言ったり邪魔をしたりしていました。
最初のうちは我慢できていたシンデレラですが、だんだん腹が立ってきたので夜な夜な三人の髪の毛を入れた藁人形に釘を刺すようになりました。
そんなある日、お城で舞踏会が開かれることになりました。そこには王子様も参加し、そこで婚約者を選ぶというのです。
シンデレラの家にも招待状が届きました。二人の娘と継母は行く気満々でドレス選びを始めました。
男なので婚約者選びには関係ないのですが、少し舞踏会に興味を持ったシンデレラは継母に、

「俺も舞踏会に行きたいです」

と言いました。継母は強い口調で

「駄目よ!貴方は家で掃除でもしてなさい!」

と言い、また仕事を押しつけました。
そして舞踏会の日。シンデレラに色々な仕事を押し付けると、3人はきれいなドレスを着て舞踏会へ行ってしまいました。
一人家に残され、床を掃除するシンデレラ。

「…俺も舞踏会に行きたかったな」

すると突然、家のドアがあきました。

「その願い、叶えてあげイタッ」
「勝手にドアを開けるんじゃありません」

そこには綺麗な女の人と、その人に殴られた青年が立っていました。

「貴方達は?」

シンデレラがそう言うと女の人はにっこり笑って言いました。

「私は魔女のローリーです」
「俺はローリー師匠の弟子で魔法使い見習いの渚紗!よろしく!!」
「俺は、シンデレラって言います」

すると魔女は「知っていますよ」と言いました。

「貴方は理不尽な仕打ちを受けながらも陰日向なくよく働きました。これはその働きのご褒美です。私が舞踏会に連れて行ってあげましょう」
「本当ですか!」

そう言ってシンデレラはぱあっ、と笑いました。しかしまた下を向きました。
もし舞踏会に行ったら3人に見つかってしまいとても怒られ、最悪の場合追い出されてしまうでしょう。
そう言うと弟子が言いました。

「ならさ、女装すればいいんじゃね?」
「はあ?」
「お前確かに美形だからばれるぜ。でも女装すればばれねーんじゃね?」

なんでそこで女装が出るんだ、シンデレラはそう思いました。
助けを求めようと魔女を見ました。魔女は少し考えた表情をすると、「それはいい考えですね」と言いました。

「馬鹿弟子、出来るだけ大きなカボチャを持ってきなさい、あとハツカネズミを二匹捕まえてきなさい」
「馬鹿って…あいあいさー」

そう言うと弟子はカボチャとハツカネズミを捜しに行きました。

「あの、俺は」
「貴方は良いのですよ」
「ありがとうございます…あと、ドレスってどうすればいいですか?うちにあるドレスは義母たちが着て行ってしまい…」
「まあ!でも心配ないですよ」

そう言うと魔女は持っていた杖を一振りしました。するとどうでしょう。シンデレラの着ていた質素な服はみるみる内に綺麗なドレスに変わりました。
更に魔女はシンデレラにガラスの靴をくれました。その靴はシンデレラの足にぴったりでした。
少しして弟子が傷だらけになって戻ってきました。彼の手には大きなカボチャがあります。

「じゃあカボチャを馬車に、ハツカネズミを白馬にしなさい」

魔女は弟子に言います。えー、と言いながらも彼はと杖を振りました。
するとそこには、立派な馬車と白馬がありました。

「さあ、これに乗って舞踏会へ行きなさい」
「は、はい。ありがとうございます」

少し動揺しながらもシンデレラは馬車に乗りました。

「あっ、シンデレラシンデレラ!」

突然弟子が叫びました。

「魔法は12時になると解けちまうからそれまでに帰ってこいよ!」

わかった。そう言うとシンデレラは馬車に揺られてお城に向かいました。

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