薫 1




不二くんは私を彼女にしてくれた。
死ぬほど嬉しかったけど、なんでなのかは分からない。

聞きたいけど聞けないんだ。

「薫?どうしたの?」

「不二くん…」

図書室で悲しい物語を読んだ。

悲しい悲しいすれ違う男女の物語。
その物語の王子様は不二くんと似ていた。

いつの間にか涙目になった私を
隣の席で難しそうな本を読んでいた不二くんはふっと笑った

「出ようか」

図書室から出るように促され
私はパタパタと足音を立てて不二くんを追いかける
彼の横顔がまた、ふふっと笑った気がした。

中庭に着くとベンチに並んで座った
何も言わずにただ座る

あぁ…不二くんは横顔もきれいだなぁ
私じゃ惨めだ…私は何の取り柄もない。なのに不二くんの隣にいる
また泣けてきたぞ…

「薫は僕の隣にいると泣くね……いない方がいいのかな?」
「違うよ…私じゃあ不二くんに…」

似合わない。そう言いかけると、


突然キスされた

「ふ、不二くん!?」
「言わせない。僕はね、僕の可愛い薫が大好きなんだ。たとえ、本人でも否定はさせない」

「〜〜っ、で、でも…」
「薫は自分に自信がないかもしれない、でもそれは薫が原石だから。薫は絶対可愛い僕のお嫁さんになるよ。保証する」

それってプロポーズですか……とは聞けないけど

私はこの不二くんの隣にいる

そう、誓った




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