目を覚ました時、自分の毛布の中に誰かが一緒に寝ているのはいつものことでした。
色んなことに疲れて寄りかかってくる人を静かに迎えるのが女の子の役割でした。
だからいつも女の子は、柔らかく、優しく、笑っていました。

自分を起こしてくれる薬はビーダマのように色とりどりで綺麗でしたが、それは自分の命を削って輝いていることも知っていました。
だんだん日毎に眠りが深くなっていることも気付いていました。
それでも女の子は誰にも言わないでいることを決めました。
この優しい毎日を壊さない代わりに自分が壊れることを選んでいました。

犬のような男の子の頭を撫でながら舌足らずの話を聞いて、お金の好きな女の子の着せる服を素直に着て、眼鏡をかけた男の子の手を煩わせる回数を減らそうと努力して。
自分を救ってくれたわけじゃない、最後まで自分の意思で壊れることを選ばせてくれた残酷だけれど優しい男の子の力になろうと、迷うことなく決めていました。

今日も女の子は眠ります。
誰かが自分のところにやって来るまで静かに眠ります。
今日も女の子は微笑みます。
自分を壊したその代わりにこの優しい人達のために微笑みます。

それが女の子の幸せでした。
泣きたくなるくらいに刹那な、儚い、心からの幸福でした。




それでも世界は美しい



(君が長い眠りにつく瞬間、まぶたを閉じるその時でさえ)



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