それでも科学者達は実験を続けました。
泣き叫びそうな痛みで目を覚まし、また夢の中に戻り、また痛みで目を覚まします。
どれだけたっても実験が実る日は来ませんでした。

そんな日々が続いたある日、何百回目のまどろみからぼんやりと女の子が目を覚ました時。
科学者達が死んでいました。
一人残らず血まみれになって今まで自分に繋いでいた長いチューブや電子機器も全て破壊されていました。
女の子が生まれた試験管にいた新たな人工の魂も壊れていました。
科学者達が自分に代わる実験体を作っていたことを女の子は知っていました。
大人が誰一人と動いていない中、小さな三人の影がありました。
犬のような男の子と眼鏡をかけた男の子。
そして不敵な笑顔を浮かべながら、女の子の閉じこめられていた透明な檻を一瞬で粉々にしてこちらに手を差し伸べてきた男の子。
それが六道骸でした。

女の子は三人と一緒にさびれた遊園地にある大きな廃屋に住みました。
年を重ね仲間が増えても女の子の体が元に戻ることはありませんでした。
眠気を覚ます強い薬を飲んだとしても一粒で三十分が限界でした、それを超えると例えどんな場所であっても眠ってしまいました。
それでも女の子は少しも悲しいと思いませんでした。

犬のような男の子は学校から帰って来るたびに元気に飛び付いて今日起きたことを話してくれました。
お金の好きな女の子は最近の流行りの服を買ってきては着せ替え人形のように女の子に着せました。
眼鏡をかけた男の子は薬が切れて色んな所で眠ってしまう女の子をいつもソファーまで運ぶ係でした。
女の子は何も悲しくありませんでした、いつも優しく笑ってただソファーの上で眠り続けていました。


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