たくさんの敵の倒し方とたくさんの国の言葉とたくさんの勉強しか知らなくてもそれしか知らない女の子は何も不思議に思いませんでした。
不思議に思わず生き続けるはずでした。

女の子が十五歳になっても、それはやはり十歳にしか見られない幼い体でした。
ザンザスとスクアーロに出会ったのはそんなときのことでした。
本当はこの先一生出会う予定はなかったのですが、小さな偶然が重なって女の子は出会いました。
出会うことが出来ました。
大人から女の子の過去を聞いたスクアーロは辛そうな顔をしましたがザンザスは少しも顔を変えませんでした。
それでも自分と同じ年の女の子の能力はザンザスにとって価値のあるものでした。
将来ボスの座が決まっているその意思は大きく、スクアーロも呆れるほど強引なやり方でそのマフィアから女の子を奪い取りました。
女の子はすごい早さで進んでいくたくさんの取り引きの中で何も分からないまま将来自分の君主になるザンザスを見上げていました。

女の子は可哀想な女の子ではなくなりました。
可哀想な過去を持つだけの女の子になりました。

女の子は敵の倒し方でもない外国の言葉でもないごくありふれたことをたくさん知ることが出来るようになりました。
テレビという箱は映像が流れるだけで中の物には触れないと言うこと、お店ではお金を払って物を買うと言うこと、お菓子は甘いものがたくさんあると言うこと、剣とはよく切れるものだから簡単に刃に触ってはいけないと言うこと、シャンパンの瓶や椅子はスクアーロに投げるためにあると言うこと、誰かと話すのはとても、楽しいものだと言うこと。


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