これはザン様とスク少年と哀しい過去を持つ女の子のお話です。

あるところに哀しい女の子がいました、何年も何年も外に出してもらえない、育ててもらえない女の子でした。
本当に時々もらうごはんだけで十年も小さな部屋に閉じ込められて生きてきました。
ある日大人の人達がのりこんできて女の子は助けられました。
十歳だと言うのにその体はどう見ても五歳の子供でした。
女の子はマフィアに引き取られましたが女の子の体は成長が遅れた体になってしまいました。

言葉なんて一言も聞いたことのない女の子はマフィアの人達に十ヵ国の言葉を教えられました。
まだ頭は何も知りませんでしたから日本人の赤ちゃんが日本語を覚えるように女の子は簡単にそれを覚えました。
女の子の不幸は生まれついての体の能力が高いことでした。
それに加えて知能が人の二倍もありました。
生きるのと死ぬのとの境目で生きていたせいで追い詰められた時に現れる野生の本能も持っていました。
マフィアの人達は女の子を重要な人材として育てていました。
もう何ということはありません、生まれてすぐそれを見抜かれた女の子は野生の本能を備えるためにマフィアに十年間閉じ込められていただけの話だったのです。

それでも女の子は何も知りません、出生の秘密も、元の黒幕も、この世界の全てのことも、何も知りませんでした。
女の子は毎日毎日そうやってたくさんのことを教えられて生きていきました。
暖かさと食事と明かりが付いただけ、女の子は閉じ込められていた十年間と何も変わらない教育の毎日を、それでも幸せに生きていました。
幸せに思ってしまうのが女の子の不幸でした。


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