「…何、何でこんなんになってんの」

「(七猫がここまで驚くのも珍しいですね…)
さっきやって来て寝てしまったんですけど、七猫は嫌がるかも知れないと思って起こしました」



確かに嫌だ。
一応ここは自分の縄張り、侵入されて良い気はしない。

しかしどうしてここに仔猫がいると誰の目にも分かるのに、空は連れ戻さなかったのだろうか。






「…実は、空が先ほどから七猫とその子の写真を撮ろうと準備してまして」

「シャーッ!」



カメラ嫌いな七猫の威嚇に、仔猫の方もビクッと飛び起きた。



「あ、チビちゃん起きちゃいましたー。猫ちゃん静かにしてなきゃ」

「やだ」



突然起こされて不安そうに鳴き出した仔猫を空が慌てて抱き上げた。
人間の赤ん坊と大して変わらない。





「チビちゃんこうなるとずっと鳴いたままなんですー…。あ、葵様少し抱いてくれませんか?」

「私がですか?」

「はい!葵様だったらきっとチビちゃんも鳴きやみます」

「…どんな理論でしょう」





しかし仔猫が細々と鳴き続けるので、仕方なく座ったまま空から受け取った。
最初はどう考えてもそうなるとは思えなかったのだけど。



「…………」

「…おや」



何と仔猫が腕の中で寝てしまった。
抱いて数分も経っていない。



「わわ、葵様すごいです!チビちゃん誰に抱っこされても寝なかったんですよ!」

「たまたま眠かったんでしょう」



はい、と空へ無事仔猫を返す。
この場にいるほとんどの隊員が何事も感じずに、このやりとりは終わったんのだけど。







七猫には嫌な予感がした。






















それからと言うもの。



「みゃー」

「……また来たんですか?」



葵の温もりを覚えたのか匂いを覚えたのか、仔猫が頻繁に執務室からやって来るようになった。

ほとんど七猫の予想通り、葵になついてしまったらしい。





「空に遊んでもらってくださいね、あちらにいますから」

「なー」

「なー、とは?」

「……葵、そいつ人の言葉わかんないよ」

「え?」



七猫の存在でいつの間にか猫には言葉が通じると思ってしまっていた。
もちろん職務中なのでかまったりせず、こんな風にすぐ空へ引き渡していたのだが。


それでも仔猫がぐずり出してしまった時にあやすのは葵の役目になり、七猫のテリトリーに入ってくることも多くなった。

これに困ったのは当然七猫。


困ったと言うよりは、憤慨。



 

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