「それに、空が仔猫の方に行ってくれるので七猫が安心しています」



普段わずらわしいほど色々と近づいてくる空が新入りの方に傾いているので、前髪を狙われることもなく平和に眠っている。

七猫のテリトリーは葵の机の横だけなので、執務室にいる白い仔猫の存在も大して気になっていなかった。

そんなある日。






「みー」

「…………」



仔猫が拾われてきて三日目、だいぶ隊室や死神の存在にも慣れたのか徐々に執務室から出てくるようになった。

そして今日は目を覚ました七猫の目の前に登場。




「にぃー」

「………(何でいんの)」



思いがけない襲来にしばしその体勢のまま戸惑う。
初めて間近で見た仔猫は思いのほか警戒心というものを持っていなかった。

そのまま一応年上である七猫の前を横切って葵の方へ進もうとした仔猫の尻尾をつかんでひき止める。





「それは俺の飼い主。お前の飼い主はあっち」



そう言って執務室からいなくなった仔猫を探している空を指さした。

仔猫は言葉が通じたのか通じていないのか、み、と鳴いたまま動こうとしない。
どうやら通じていないようだ。






「……四楓院」

「なにー?あ、チビちゃん見つけました!」



良かったー!と安堵しながら駆け寄ってきた。



「猫ちゃんっ、尻尾つかんじゃ駄目でしょ!」

「つかんでも取れないけど」

「そう言う問題じゃないの!」



よく分からない怒りをぶつけられたが、とりあえず空が仔猫を連れて行ったのでよしとした。

やれやれ、と再び丸まって眠りにつく。



さっさと親猫見つかんねーかなーと、その時は思っていただけだったのだけど。

















次の日。

いつもと同じように毛布の上で丸まって眠っていた時。



「七猫、七猫」



珍しく隣の机で仕事をしている葵が声をかけた。
自分が眠っているときはほとんど起こさないので、何かあったのかと眠気まなこで顔をあげると。



「…どこか違和感はありませんか?」

「…いわか…?」



眠気で上手く回らない頭をプルプルと横に振ると、何だか丸め込んでいる足の部分に変な温もり。

視線を向けると、例の白い仔猫が丸まって眠っていた。

思わずビクッと体が跳ねた。



 

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