それは何気ない空の行動から始まった。
「葵様!仔猫拾っちゃいました!」
「…はい?」
【捨て猫オリエント】
昼食から戻ってきた空が抱えてきたのは一匹の仔猫。
まだ生まれたばかりなのか簡単に抱きかかえられるほど小さく、空の腕の中で不安げに震えている。
「この子はどうしたんです?」
「隊室の裏で震えてたんですー。多分お母さんとはぐれちゃったんじゃないかと思います」
それを聞いた殺那が「それなら近くに親がいるだろう」と至極まともに返したのだが。
「半径1km探したけどいなかったもん!」
「…なぜその熱意を仕事の質に向けられない…」
多少落胆している隙に隊内の女子隊員が楽しそうに空の抱いている仔猫で遊んでいた。
得てして女子は小さい動物が好きだ。
叱るのが困難になり、やれやれと肩を落とす。
「葵様、空の奴どうしましょう」
「空が拾ってきてしまう気持ちも分かりますけどね」
「しかし仮にも動物なら一人で生きていー…」
バサバサァッ!
その瞬間、大きな羽ばたく音を立てながら巨大なカラスが窓の向こうを通りすぎて行った。
「……最近肉食のカラスが増えているというのは本当ですか?七猫」
「うん。知り合いの猫も何匹かやられた」
「…………」
どうやらすることは決まってしまったらしい。
「チビちゃん牛乳ですよー!」
「みぃー」
結局親が見つかるまでの間、葵の許可を得て休憩用の執務室で保護することになった。
世話役は事の発端の空に加えて、動物が好きな隊員達。
暇さえあればひっきりなしに相手をしている。
「全く仔猫一匹で大げさな……」
「良いじゃないですか、生き物に冷たい隊員よりは」
今回の仔猫騒動にあまり葵は関わらなかった。
自分が関わる以前に空達がしっかりと世話をしているし。
[ 22/67 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]