大谷吉継 | ナノ





「さて、料理の時間よ」

「私は食材じゃない!」



初っぱなから爆弾発言をする刑部に抱えられ、いつもの寝室まで連れてこられた。
力業を必要とする時のこの数珠は正直ずるいと思う。



「一から億まで食材の兎が何を鳴くか。心優しきわれが食わぬ物を狩りはせぬ」



要は諦めが肝心だと言われたけれど、ここで諦めたらたくさんのことを失う気がする。



「何も鍋にして食うわけではあるまい。ただ少しばかり遊べば解放してやろ」

「あ、遊ぶって…?」

「そうさな…われは他人に包帯を巻いたことがなき故、いつもわれを巻いているぬしを巻いてみるか」



え、えっと、つまりは私に包帯を巻けば満足してくれるのかな…え?あの刑部が?



「まあ足や腕では満足せぬがな」

「やっぱり!」



うわあ、と顔を覆ってうつむいた。
だって腕や足以外で巻くとしたらお腹とか、む、胸、とか…。



「や、やだ!」

「ほう、常日頃われにしていることができぬと申すか?」

「!」



そう言われると反論出来ない。

包帯を巻くことは別にやましいことじゃないし、刑部にとってはすごく必要だし、だからそれを拒むっていうのはやっぱり理にかなってないと思うし…。



「っでも、肌を出すのは恥ずかしい…し…」

「ならば後ろから巻いてやろ」

「……本当?」



あれ、結局されることは変わってないのに刑部が優しく見える。
これは私が騙されてるのかな。



「わ、かった……」



何とか勇気と声を振り絞って答える。
直後、刑部の目が楽しそうに歪んだのを見て、早速後悔している自分がいた。
うん、騙されていた。



「うう……恥ずかしい」

「この程度なら易かろ、われが抱ける体であったなら二日は解放されなんだ。喜んでおくか?」

「違うと思う……そこは絶対違うと思う」

「ヒッヒ……左様か。では来やれ」

「うー…」



小袖一枚を羽織ったきりの格好になって部屋に戻ると、非常に楽しそうな刑部に手招きされた。
大丈夫、女の人が胸にサラシ巻くようなもの、と自分に言い聞かせる。

てっきり刑部と同じように座っている体に包帯を巻かれるのかと思ったけど、妙に刑部が自分の膝上をポンポン叩いていた。




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