次の日。
「どうだ、われの災厄は効果テキメンであろ」
「ちょっとこうなること分かってたもん…」
見事に刑部から風邪をいただいた私がここにいた。
女中さん達も皆、「今まで絶対にうつらなかったのに」と不思議がっている。
だって今まで看病しててもあんなにくっついたりしてませんでしたもの…
「刑部はしっかり治ってるし…」
私の枕元にはひどく機嫌の良い刑部がまる一日鎮座している。
昨日あれだけ熱を上げるようなことをしたのにもう全快するなんて。
「熱を下げるには熱を出し切るに限る。幼子でも知っておるわ」
「小さい子はそんなやましいこと知らな…」
「なに熱を下げたい。そうかそうか」
そう惚けて布団に手をかけたので、頑なに威嚇した。
「し、しない!そういうことはしない!私の布団は今から私の領土!」
「しょっちゅうわれの布団へ割り入る輩が何をいう」
「そ、そういう目的じゃないもん!刑部は器用だからそれで熱下がるけど、私はきっと上がっちゃうと思うし…」
「小雨、世にはこんな言葉がある」
「……何?」
「『ものは試しよ』」
「!!
女中さん!女中さーん!」
素晴らしい学習能力を持つ刑部が人払いを済ませていたことが影響して、助けはやって来なかった。
おかげでこの日再び「嫌い」宣言をすることになった。
この人は反省していない。
絶対、していない。
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