大谷吉継 | ナノ





あ、この包帯ほどきおわったら刑部に何か着るもの持ってこなくちゃ。
さすがに体が熱くても上に何も羽織らなかったら治るものも治らない。
そうぽつぽつ考えながら、最後の一巻きをほどき終えた瞬間。
刑部の両腕が勢いよく私の体を引き寄せた。



「!」



べたっと音が聞こえそうなほど体が刑部と密着する。
今の今までこんな力をどこに隠していたのかと思えるほどの早業だった。



「ぎ、刑部っ」

「何だ」

「い、いやあの、包帯ほどいたから、何か着るもの…」



熱い、いらぬと切って捨てられ、より強く体を押しつけられる。
部屋着用の浴衣を着ていたせいで、薄い布越しに刑部の体の形がまざまざと伝わった。
さすがにここまでくると恥ずかしさが勝ってくるようになる。
こういう時の私の気弱さは筋金入りなので、流される前に離れようと強く両手で刑部の胸を押して体を離した。

刑部も案外あっさりと私の背と後頭部を両腕から解放したので、安心して一息ついた。
それがいけなかった。



ずぼり



「ひ、ひゃあ!」



突如、浴衣の大きくはだけた襟から両手が侵入してきた。
身を引くよりも遥かに早く私の素肌と浴衣の隙間に入り込んだ手はそのまま背まで到達し、先ほどの倍の力で再び引き寄せた。



「や、やだやだ!嫌だ刑部!」



僅かな抵抗も無事聞き入れられることなく、またもや刑部の体にぴたりと密着させられた。
ただ先ほどと違うのは、私が羞恥で泣きそうだということだけだった。



「…ぬしの体は心地がよい」

「う…っ」



だってはだけた襟から侵入した腕に背中まで到達されたのだ。
当然浴衣の襟は押し広げられ、まともに着ている部分など背中ぐらいのものだ。
剥き出しにされた素肌で刑部の体にくっつけられて、浴衣に侵入した腕はさっきから生身の背をなぞっていて、いくらもう片方の腕が私の頭を抱えるように撫でていてくれてもこの恥ずかしさは消えるものじゃない。

胸元に押しつけられた刑部の体はすごくすごく熱かった。
固くて熱くて、心臓の音が不規則だ。
そして刑部はその逆のことを私に言った。
だから心地よいのだと。



「ぎょう、ぶ…」

「やれ、どうした」



ああ、声がいつもの声色だ。
楽しむ刑部の声色だ。
熱があるくせに、なんて殊勝だろう。


 

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