大谷吉継 | ナノ





羞恥だけが頭を占めて、自分でも分かるほど心臓の鼓動が大きくなった。
体が熱い。
刑部の指が、手のひらが動くたびぞぞぞと微弱な快感が体を襲う。
何か特別な生き物が這っているような、そんな錯覚さえする。



「刑部っ…早く、包帯…」

「まあゆるり待て。夜は長かろう?」

「で、も…」

「ほお…ぬしの鼓動はずいぶんと早いな。ほれこんなに」

「そこ、や、だ……ぁ」



背後からとは言え、胸元の肌を慎重にまさぐられる行為に頭の中が霧をかけたように朦朧とする。
ただ刑部の手が、触れているだけなのに。
燃えてしまいそうなほど恥ずかしい。



「刑部、早くし、て…っ」


「…やれ仕方なし」



そうしてようやく刑部が包帯を体に巻き始めてくれた。
くるくると、無駄の無い動作で。
時折肌に刑部の手のどこかが触れると反応してしまう体を抑えるのに苦労した。



「ぬしが此ほどまでに過敏とはな」

「ううー…」



違う、誰だって好きな人に触られたらこうなる、とはさすがに口に出せなかった。



「……ほお、ぬしも言葉で惑わすようになったか」

「え!?」



口に出ていた。
とっさに両手で自分の口を塞いでも、もう遅い。
刑部は頭を下げて、笑いを堪えきれないというように肩を震わせている。

どうしようこれ、あ、恥ずかしい、凄まじく恥ずかしい。
顔まで真っ赤になったのが自分でも分かってしまった。



「ぎ、刑部、お願い今のは…」

「安心しろ、決して忘れぬ。ことあるごとに思い返してやろ」



ですよね、やっぱりそのくらいのことはしちゃいますよね。
ああもう恥ずかしいにも程が…爆発出来るなら今すぐしたい…!



「なに、ぬしの考えはよく分かった。そら」

「……あ」



気がつくと、私の胸は綺麗に包帯が巻かれ終わっていた。
緩んでいる箇所はなく重なりが整然と連なっているのに、少しも窮屈さはない。
これを後ろから巻くなんて、やっぱり刑部は慣れている。

これが世に言うサラシ…。



「あ、ありがとう…」

「礼なら顔を見て言われたいものよな」

「そうだね、ごめ――」




ぎゅっ



「ん?」



刑部の言葉に体ごと振り向いた瞬間、後ろ手の手首に妙な圧迫感を感じた。
首だけをひねって背後を見やると、そこには見事に別の包帯で拘束された両手首が。




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