「……そこ?」
「他に何がある」
いえ、ないです。
膝だけです。
「い、痛くしないでね」
「どうやっても痛い過程は無かろ。さっさと来やれ」
「わっ」
急に手を引かれ、どさ、と無事刑部のあぐらの真ん中に着地した。
背中にちょうど刑部の胸の辺りが当たる。
「さて遊…巻くか。じっとしておれ、般若像のように」
「う、うん……」
これは大人しくしていないと痛い目を見る予告。
そのせいで明らかに「遊ぶ」と言おうとしたことを追及出来なかった。
妙にさわがしい心臓を心配しながら正面を見つめていると、小袖の裾からするりと二本の手が腰へ滑り込んできた。
「ひゃっ」
思わず声が出たけど、何とか体は動かさなかった。
背後から侵入してきた刑部の両の手は腰に添えられ、そのままゆっくりゆっくり上へとなぞっていく。
皮膚の上を移動する手がひどく熱く感じられる。
…熱くって…あれ、刑部手のひらに包帯つけてないんじゃ…
「!!!」
それに気づいた瞬間、自分でも分かるほど身体中に熱が走った。
刑部の手。
包帯を巻いていない、固く骨ばった刑部そのものの手は腰から脇腹へなぞるように上へと移動していく。
そのたびになぜかゾクゾクと体の芯が痺れる感覚がした。
刑部が触ってる。
直接私に触ってる。
「熱いな」
「きゃっ」
いきなり耳元に飛び込んできた刑部の地から響くような声に心臓が跳び跳ねる。
座っている高さ上、刑部の顔が私の肩に乗ることを忘れていた。
「どうした?」
「び、びっくりし、て…」
「…奇妙よな」
「え…?」
微かに刑部の方へ顔を向けた時、脇腹に添えられていた両手が同時に胸の下を這い出した。
小さく跳ねてしまった体を笑われたけれど、背筋に悪寒にも似た刺激が走って気にとめることができない。
「実に奇妙よ…なぜわれとぬしはこうも違う造りをしている?」
「つく…り?」
「左様。柔く、熱く、滑りさえして…」
ぎゅ、と私の背に刑部の体が密着した。
「…なぜこうも惹かれやる」
「刑、部………ひゃっ、う…!」
刑部の指が胸の間へゆっくり移動してきた。
少しでも指をずらせば触られてしまう位置。
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