豊臣軍 | ナノ


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「おお、こりゃ小生の昔の甲じゃないか。懐かしいな」

「あ、三成が折った刀達だ」



蔵の中には不要になったあらゆる物が詰め込まれている。
その中には自分の上司に報告せず、こっそりと持ち込まれたものも多く。



「半兵衛、大量の藁人形が出てきました」

「……吉継君、あれだけ丑の刻参りをやめてくれと言ったのに」

「あいつはどれだけ呪いたい相手がいるんだ?」

「あ、全部に黒田って書いてあった」

「おい!」



両腕に抱えるほどの藁人形を持って手鞠が出てきたが、どう扱ったものかと半兵衛が顎に指を添えて悩む。



「不要ではあるのだけど…これ、そのまま燃やしていいのかい?」

「藁だからよく燃えます」

「いやいやいや、絶対に刑部の怨念が詰まっとるぞ。それを燃やしたら小生も燃えたりしないだろうな」

「試してみようか、手鞠」

「えい!えい!」

「あ!躊躇いもなく突き刺すな!こら!」



結局燃やすのは何か気が咎めるということで、黒田が全部引き取った。



「それどうするの?」

「癪だが部屋の押し入れにでも入れるしかないな」

「(この流れまでが吉継君のいじめなんだろうね…)大事に扱ってあげるといい」



手鞠の発見で進みが止まっていたが、次は黒田が見慣れないものを持ってきた。



「これは何じゃ?ずいぶんと巻数の多い書だな」

「書?」



大柄な黒田が両手を広げて運んできたのは、薄い書の集まり。
おおよそ五十はあるだろう。
首を伸ばしてその題名を目にした手鞠が、半兵衛が持ってるやつだ、と呟いた。



「ん?もう持っとるのか」

「うん、半兵衛の部屋の棚に入ってるよ。でももう少し分厚かったような…」

「半兵衛、お前さん何か知ら……知っとるな、うん」



顔を両手で覆ってしまっている半兵衛に、黒田が頷いた。
思い出したくない事を思い出してしまったかのようだ。



「……死去した筆者の、未公開の書と言われてしまって……」

「…買ったのか、お前さん」

「実際に買ってみたら、既に発売されている連作を細かく分けただけだったよ。古典的な手に引っかかってしまった…」

「気持ちは分かるぞ、うん。期待するよな」

「燃やしてくれ…」

「それは書をか?お前さんをか?」



余程値が張ったのだろう。
もう見たくもない様子だったので、数ある不用品の中にこっそりと紛れ込ませた。




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