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「三成はどうしたら落ち着く?」
「貴様を何かしらの手段で敗北させなければ私の心が落ち着くものか!今すぐ私と刃を交えろ!!」
「普通に無理だー」
身内同士での喧嘩は半兵衛が固く禁じているし、そもそも今のこの格好で出来ることと言えば立つか座るか、その二択で。
「正座勝負くらいしか戦えることないよ」
「…ならばそれでいい!勝負だ!!」
「…三成、その鎧で正座でき―」
「喋るな!足に響く!」
「ええええー」
――――――…
外から伸びている小屋の階段を黒田がさして面白くもなさそうな足取りで昇っていく。
手鞠と三成を収容して一刻ほど経っていた。
「ったく刑部の野郎、毎度毎度面倒ごとはみな小生に押しつけやがって……ここか」
閉じられた木の引き戸の前に着くと中に一声かけようとも思ったが、罰として閉じこめられているのだから不要かと思い至る。
結局何の気なしに引き戸を引いた。
「おーい手鞠、三成。様子を見に来てやっ……」
「ぐあああああ!」
「あばばばばば」
「…何を転がってんだお前さん達は」
足をじたばたと暴れさせながらそこら中を転げ回っているので、時たま互いの頭同士を盛大に打ちつけ、また叫びながら転がっていく。
「くっ…!正座の代償が…!こうまで苦しみを伴うものだとは…!!」
「足があああ」
「な、なんだなんだ。一体どうし」
「黙れ!五月蝿い!消し炭になれ!」
「おい!?小生が何をした!?」
荒ぶり続ける三成の横から、どうにか少し落ち着いたらしい手鞠にかくかくしかじかと説明された。
「…お前さんらはあほか」
「っ貴様にだけはぁ…!」
どうやら痺れまくったらしい足をそのままにしてでも襲いかかってきそうな三成の形相に、慌てて手鞠へ話題を振る。
「ど、どっちが勝ったんだ?」
「多分引き分け、かなあ…」
三成とは違い、半ば諦めるように横たわりながら呟いた。
結局同時に足の痺れに負け、決着を口にするよりも先に狭い部屋を転がる作業の方が優先されたと言える。
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