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―――――――…
「軍議は終わった、どうやら三成は問題を鎮静させずに済んだようだな」
「時間が経とうと経つまいと同じことだよ秀吉。僕は譲る気は――」
「半兵衛ー!」
「「!」」
秀吉が軍議から戻り、再び論争に参加しようと思われた時、今までと打って変わって手鞠が朗らかに部屋へ飛び込んで来た。
何事かと思ったが、その二本の脚が何かに覆われているのを見て一旦口論を中止する。
「…手鞠、その包帯は?」
「刑部が巻いてくれた!」
「これ、まだ途中というに」
半股の終わりから足の先までしっかりと包帯が巻かれたままぴょいぴょい喜ぶ手鞠。
その後ろからゆっくり追ってきた吉継が、意味ありげな視線を二人へ送る。
遠まわしに諫められていることをようやく理解した。
「…確かに包帯なら通気性も良いね、風に触れる部分を最小限に出来ることだし」
「うむ、露呈したままで無いというなら我はそれで構わぬ」
「三成が暴れ馬の状態で城内におりますが」
「…ちゃんと止めておいておあげよ、秀吉」
「…無論よ」
どうやら静まった二人の様子に、手鞠が終わり?終わり?としきりに確認する。
そうしてようやく半兵衛がすまなそうに微笑んだので、心底安堵した。
「それなら動きにくいことも無いね、寒い間はそうしよう。吉継君も手を煩わせてすまない」
「いえ。軍師殿は太閤と軍議が残っておろう、お行き下され」
「ありがとう」
そう言った半兵衛が急いで秀吉を追って出てから、手鞠が大きく息を吐いた。
二人が手鞠と三成を巻き込んで喧嘩を始めるのは珍しくないとは言え、慣れはしないのだろうと吉継は思った。
「そら手鞠、足のをすっかり巻いてしまわねば」
「ひらひらのままでいる。刑部とおそろいがいい」
「足の包帯をたなびかせては片端からほどけよう、われの手と等しくはいかぬ。ほれ、蝶々結びにしてやる故」
「わーい」
こうしてようやく、一日ぶりに平穏が戻ってきた城だった。
「三成ー、見て見て蝶々。刑部とおそろい」
「何だと!刑部、私にも巻け!!」
「…どこにだ?」
140万打記念
豊臣軍/半+三+刑 弄られてる助けて/砂蛇様
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